ペンギン・ハイウェイ


 2021.11.4      不思議な原作がマイルドに映像化【ペンギン・ハイウェイ】

                     
ペンギン・ハイウェイ コレクターズエディション
評価:3

■ヒトコト感想
原作は読んでいる。原作はかなり特殊な作品ではあった。それをアニメ化するとなると、どのように映像化されるのか。お姉さんが投げたコーラの缶がペンギンに変身する。まったくロジカルな内容ではないファンタジーあふれる展開であり、それを映像化している。謎の球体”海”とは結局なんなのか。お姉さんの存在は何なのか。アオヤマ君が独自の分析をしているのだが意味がわからない。

小学生時代に感じる独特な雰囲気が良い。年上のお姉さんに対するあこがれ、そして同級生に対する様々な感情。大人には内緒にして、子供たちだけで独自に研究と調査をする。本作はSFといってもよいのかもしれない。結末では、特別な何か種明かしがあるわけではない。結末に向かうプロセスを楽しむべき作品だ。

■ストーリー
誰にでも、忘れられない夏がある――小学校四年生のアオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録する。毎日努力を劣らず勉強するので、「将来は偉い人間になるだろう」と思っている。そんなアオヤマ君にとって何より興味深いのは歯科医院の“お姉さん"。気さくで胸が大きくて、自由奔放でミステリアスなお姉さんを巡る研究も、まじめに続けていた。

ある日、アオヤマ君の住む郊外の街に突如ペンギンが現れ、そして消えた。さらにアオヤマ君は、お姉さんがふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」一方、アオヤマ君は、クラスメイのハマモトさんから森の奥にある草原に浮かんだ透明の大きな球体の存在を教えられる。やがてアオヤマ君は、その謎の球体“海"とペンギン、そしてお姉さんには何かつながりがあるのではないかと考えはじめる。そんな折、お姉さんの体調に異変が起こり、同時に街は異常現象に見舞われる。果たして、お姉さんとペンギン、“海"の謎は解けるのか――少し不思議で、一生忘れない、あの夏が始まる。

■感想
原作を読んだイメージとしては、かなり特殊な作品だと感じた。どこまで原作の特殊さをアニメとして表現できるのか。アオヤマ少年やお姉さんのキャラクターは良い。文章では伝わらない部分がよく絵で表現されている。お姉さんの大きなおっぱいが気になって仕方がないアオヤマ少年。

クラスのいじめっ子やマドンナ的な女の子など、小学生の基本パターンは抑えている。いじめっ子グループが嫌な奴一辺倒ではなく、それなりに男気があるのが良い。小学生らしいキャラクターに満ち溢れている。

突然、街にペンギンがあちこちに現れ始める。なぜ、どこからペンギンが来るのかに興味を示したのがアオヤマ君だった。アオヤマ君のキャラはくそマジメで誰とでも敬語で話をするちょっと特殊な小学生だ。もし同級生にいたら、なかなか友達になるのは難しいだろう。

父親の影響なのか、アオヤマ君は研究することに熱心だ。ペンギンが突然現れた件と、謎の浮かび上がる球体である海を研究しようとする。大人たちに介入されないように秘密の研究というのは、なんだかワクワクしてくるのは確かだ。

不思議な現象の種が明かされることはない。アオヤマ君が立てた仮説もなんだかよくわからない。お姉さんがペンギンを生み出すことや海と関係があることなどを臭わせてはいるが、結局どのようなオチなのかわからない。ごく普通の街で不思議な出来事が起こり、また、数日経つとそのことは忘れさられているのだろう。

アオヤマ君と一部の小学生にのみ、心に深く思い出として残るのだろう。この不思議な原作をアニメ化したのはすばらしい。原作からは考えられないほど一般受けするようにマイルドにされている。

よく考えれば、森見登美彦の作品はよくアニメ化されている。



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