2019.12.12 孤独死した死者を弔う【おみおくりの作法】
おみおくりの作法 [ エディ・マーサン ]
評価:2.5
■ヒトコト感想
民生委員が孤独死をした者たちを独自で弔う物語だ。寡黙でいかにも真面目そうな風貌のジョン。独身で趣味もなく、ただひたすら孤独死した者たちの近親者探しや関係者を探しだそうとする。ちょっと気持ち悪いと思ったのは、孤独死をした者たちの遺品の中で、本人と思わしき写真をそっと手に取りそのまま自分のアルバムに収めてしまう場面だ。
見方を変えると、連続殺人犯が自分が手をかけた者たちの写真をアルバムにおさめるのと変わらないように思えた。これを悪趣味ととらえるのか、それとも誠意と熱意のたまものと考えるのか。イギリス中を訪ねて孤独死をした故人を知る者を探し出そうとする。完全な善意での行動。そのため、役所から費用削減として首を切られることにすらなってしまっている。。。
■ストーリー
ロンドン市ケニントン地区の民生係、ジョン・メイ。ひとりきりで亡くなった人を弔うのが彼の仕事。事務的に処理することもできるこの仕事を、ジョン・メイは誠意をもってこなしている。しかし、人員整理で解雇の憂き目にあい、ジョン・メイの向かいの家に住んでいたビリー・ストークが最後の案件となる。この仕事をしているにもかかわらず、目の前に住みながら言葉も交わしたことのないビリー。
ジョン・メイはビリーの人生を紐解くために、これまで以上に熱意をもって仕事に取り組む。そして、故人を知る人々を訪ね、イギリス中を旅し、出会うはずのなかった人々と関わっていくことで、ジョン・メイ自身も新たな人生を歩み始める……。
■感想
民生委員のジョンが孤独死をした者たちを弔う。日本の「おくりびと」に近いのかもしれない。対象が孤独死をした者たちで、近親者や知り合いを探すことからスタートしている。かなり果てしなく長い道のりだ。
ひとりの孤独死をした者にかける時間は膨大となる。そのため、役所の経費削減としてジョンは解雇されてしまう。それでもなお、やりかけた仕事は最後までやろうとビリーの近親者を捜しだそうとする。孤独死をした者には何かしら事情がある。それも良い事情ではなく悪い事情だ。せっかく近親者を探しだしてもつれなくされる場合が多いのは報われない仕事だ。
ジョンは自分が弔った者たちの写真をこっそり抜き取り、自分のアルバムに収集している。中にはスピード写真しかないパターンもある。どこの誰だか知らない孤独死をした者のコレクション。悪趣味なのか、それとも誠実さのあらわれなのか。
ひとりの死者にあまりにも時間をかけすぎた結果、それに見合う成果がだせていないということで首をきられてしまう。孤独死した者の近親者を探すというのは誰が喜ぶわけでもない。実は、死者からしても余計なことをするな、と思われていたとしても仕方がない状況だ。
ジョンの最後の仕事であるビリーの家族を探す旅は、目的を達成することに成功する。そして、ビリーの娘と良い関係となれそうな雰囲気がありながら…。最後の最後に辛いラストが待っている。ジョン自身も実は孤独なのだろう。自分がそうなることを予期していたのか、それとも…。
皮肉にもジョンの葬式にはほとんど身内は来てない。ただ、自分が弔ってきた死者にだけに好かれているというのは悲しいことだ。日本のおくりびととはテイストが異なるが、日本でも映画化できそうな題材だ。
孤独死をする者は、近親者からしてもそっとしておいてほしいというのが本音だろう。
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