2010.7.5 誇り高き納棺師 【おくりびと】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
納棺師という職業が存在することを知らなかった。遺体を綺麗にし、遺族の故人への想いを綺麗なものにする。作中で大悟の妻が強烈に反対したのもよくわかり、その一方でそこまで強固に反対することもないのでは、と思う自分がいる。人は誰でもいずれ死ぬ。その死を扱う職業というのは、どこかおおっぴらにできない部分があるのだろう。肉体的な汚れなどあるはずがないのだが、遺体を触ることによってどこか穢れた印象がぬぐえない。このことで大悟の妻を非難することはできない。ただ、本作を見終わると、納棺師という職業が誇り高いものに思えてくるから不思議だ。仮に大悟の子供が父親の職業によってイジメを受けたとしても、本作のような作品を見れば、イジメはとたんに止むような気がした。
■ストーリー
納棺師─それは、悲しいはずのお別れを、やさしい愛情で満たしてくれるひと。遺体を清め棺に納める納棺師として働くことになった主人公の成長と周囲の人々の人間模様を綴る。
■感想
納棺師という職業はそれほど儲かるものなのだろうか。なり手がいないということを加味しても、月に50万というのは破格な気がしてならない。山形の田舎町で納棺師が忙しくなるほど人が次々死んでいくのだろうか。現実的な部分に目を向けると、嫌な感じになってしまう。本作では、チェロ奏者という夢を諦め、生活のために働こうとした男が直面する奇妙な仕事の不思議さを描いている。どことなく、コミカルな印象を植え付ける前半。それが一変、後半からは生き別れた父親の存在と、納棺師の職業に誇りを持つ主人公の心境の変化などが、特に強調されている。
もしかしたら、大悟の奥さんが執拗に納棺師の仕事に反対したことに、違和感を持つ人がいるかもしれない。それなりに人のためになる仕事であり、給料も良いからと思う人はただの偽善者だ。実際に自分の夫や、身近な人が毎日どこの誰ともわからない人の遺体を触ってきたとなると、普通ではいられないだろう。本作のようにすべてがすべて綺麗な遺体なわけではない。中には解剖された遺体もあれば、あちこち傷だらけであったり、腐りかけた遺体もあるかもしれない。病気の危険もある。それらを無視することなく、まっすぐに向き合ったのが大悟でありその妻なのだろう。
テンポよく進む展開と、ユーモアを交えながら、最後は少しホロリとさせる良作。海外で受けるのもうなづける作品だ。日本人であっても納棺師とうい未知の仕事に興味がわき、人の死に直面しなおかつその家族の悲しみを一番近い場所で見ることになる。その場に立ち会うことは、感情移入することなく、ドライに仕事をこなしながら、遺族にはそれを悟らせてはならない。なんだか非常にプロフェッショナルな技術が必要な職業に思えてきた。
もし納棺師と出合った際には、必ず本作を思い出すだろう。
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