ニワトリは一度だけ飛べる 


 2019.8.27      まるで池井戸潤原作の日曜ドラマだ 【ニワトリは一度だけ飛べる】

                     
ニワトリは一度だけ飛べる (朝日文庫) [ 重松清 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
まるで池井戸潤原作の日曜ドラマを見ているような気分になる。リストラ部屋であるイノベーションルーム、通称イノ部屋に送られた男たちの物語。主人公の裕介は家庭があるためリストラされるわけにはいない。同期の羽村は派閥争いに敗れイノ部屋送りになる。若手の中川はプライベート重視でイノ部屋送りを喜んでいる節さえある。それぞれ事情が異なる3人のイノ部屋での奮闘が描かれている。

てっきり社内で新規ベンチャーを興し逆転する物語かと思いきや…。オズの魔法使いを模した予言的なメールから、衝撃的な展開となる。会社の事情や家庭の事情などそれぞれ事情はある。イノ部屋送りをどうとらえるか、というレベルではない怒涛の展開が後半に待っている。

■ストーリー
左遷部署「イノベーション・ルーム」に異動となった酒井裕介のもとに「ニワトリは一度だけ飛べる」という題名の謎のメールが届くようになる。送り主は酒井らを『オズの魔法使い』の登場人物になぞらえて、何かメッセージを伝えようとしているようなのだが…。

■感想
イノ部屋送りになった者たち。まだ家のローンがあり子供たちも小さい裕介。追い打ちをかけるように義父の介護が必要となり通勤に片道3時間かかる横浜に引っ越したいと嫁から言われる。何もかもうまくいかない時期なのだろう。

イノ部屋の仕事も張り合いがない。まさに強烈にストレスがかかる状態の裕介に謎のメールが届く。オズの魔法使いのキャラクターに3人を模した予言のような内容となる。裕介が何か一発逆転の発想でイノ部屋が会社の危機を救う、的な展開を想像していたが…。そうはならなかった。

同期の出世頭である羽村は派閥争いに敗れイノ部屋送りに。まっさきに転職しそうなキャラだが、イラだちばかりを募らせ文句ばかり言い、何も変化がない。一番情けないタイプだ。異業種交流会で仲間たちから引っ張られることを想定していたが…。

羽村の状況はみじめすぎる。会社の挑発にのり懲戒解雇にされそうなタイプだろう。羽村が思い切って転職できないのも、自分に自信がないからだ。イノ部屋送りになり、口では辞めてやると言いながら、いつまでも辞めない。悲しすぎる。

若手の中川は強烈だ。イノ部屋に来た当初は、仕事がなく東京にこれると喜んでいた。現代っ子でプライベートを重視するタイプか?と思ったが、実は裏でとんでもない真実が隠されていた。中川の娘は心臓の病気で横浜の病院に入院している。イノ部屋内部で、誰かひとりが横浜の新事務所に移転できるという話まで持ち上がってくる。

イノ部屋内部で仲間割れを起こさせる作戦か?その後、様々ゴタゴタはあるが、会社の不正が明るみになると、そこから一気に物語は加速していく。

ラストの展開はまさにドラマのように急転直下だ。



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