ナミヤ雑貨店の奇跡


 2019.9.9      原作の雰囲気そのままだ【ナミヤ雑貨店の奇跡】

                     
ナミヤ雑貨店の奇蹟
評価:3

■ヒトコト感想
原作はすでに読んでいる。現在と過去を、手紙を通して行き来する。ナミヤ雑貨店の入り口ポストに手紙を入れると、現在であれば過去の店内に届けられ、過去であれば現在に届けられる。最初は意味の分からない手紙のやりとりの中で、次第に仕組みがわかってくる。過去の人にアドバイスする現代の者は、これから何が起こるかを知っているだけに適切なアドバイスができる。

それぞれ悩みをもった者たちにはそれぞれのエピソードがある。そのエピソードはどこかでつながっている。ラストに近づくにつれ、実はあの人とあの人はつながっていたのだ、という驚きの気持ちがわいてくる。つながりが明らかになることですっきり感がわいてくるのは間違いない。

■ストーリー
2012年。幼馴染の敦也、翔太、幸平の3人は、ある日夜を明かすため1軒の廃屋に忍び込む。そこはかつて悩み相談を受けることで知られていた「ナミヤ雑貨店」だった。今はもう廃業しており、自分たち以外誰もいないはずの店内に、突然シャッターの郵便口から手紙が落ちてくる。

なんとその手紙は32年前に書かれた悩み相談だった。敦也たちは戸惑いながらも、当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書く――。彼らの回答で人生が変わっていく相談者たち。次第に明らかになっていく雑貨店の秘密と、相談者たちと敦也たちの共通点。彼らがこの雑貨店に忍び込んだのは偶然ではなかったのか――?そして、敦也たちがある人物からの"最後の手紙"を受け取ったとき、彼らの運命が大きく動きだす――。全ての繋がりの謎が明らかになる時、思いもよらない驚きと感動のラストが待ち受ける。

■感想
悩みの解決を通して、奇跡的な出来事が起こる。原作を読んだ時は、その絶妙なつながりに驚かされた。悩みは多種多様だ。ミュージシャンを目指すべきかどうか、金を稼ぐために水商売を続けるかどうか。それらに対して答える側は辛らつな言葉をつづる。過去からの悩み相談に答えるのは現在の者たちだ。

当然ながら、ミュージシャンが歌うのは現在であればヒット曲であったりする。その結果、可能性があることがわかりミュージシャンとして後押ししたりもする。

過去の人の悩みを現代の人が解決するだけならば、ごく普通の物語だ。土地のバブルやバブル崩壊を知っているだけに、金に悩む過去の人に対しては適格なアドバイスができる。その結果、悩める女は、不動産で大儲けし女社長としてバリバリ活躍することになる。

それが、実は現代で悩みに答えていた3人の男たちが育った孤児院と関わり合いがあることがわかる。後半になると、怒涛の展開で、次々と新たな関係が浮かび上がってくる。この流れは非常にすっきりする。

原作では描かれていたが省かれたエピソードもある。それぞれのエピソードの中では必ずしもすべてがハッピーエンドなわけではない。過去から現在へつながり、思わぬところで神の奇跡を思わすような関係が出来上がる。

エンディングではそれぞれの未来が描かれている。犯罪に手を染めてナミヤ雑貨店に逃げ込んだ3人組がそれぞれ希望の持てる未来へ突き進んでいるのは良い。他の者たちも、ナミヤ雑貨店に悩みを持ち込んだ当初からすると、表情が明るく前向きになっているのが良い。

原作の良さが十分表現されている。



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