木曜日の子ども 


 2019.6.23      親を毒殺しようとする子供たち 【木曜日の子ども】

                     
木曜日の子ども [ 重松 清 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
重松清らしくないミステリアスな作品だ。中学で起きた無差別毒殺事件。事件が起きた地区に引っ越してきた家族は、息子がその犯人と面影が似ていることに困惑するのだが…。毒殺事件の犯人に焦点を当てるのではないため、不気味さは常に付きまとう。ワルキューレという無味無臭で致死量が少ない毒薬がまだどこかにあるらしいという噂が立つ。

犯人も時を経て出所しているらしい。となると、何か新たな無差別毒殺事件が起きるのでは?という不安感が増す。物語はその通りに進んでいき、結婚相手の連れ子との関係に悩む主人公が、毒殺犯たちと対決する物語だ。犯人たちは世界が終わることを希望し、それが叶わないとわかると自分の世界を終わらせようとする。まさにサイコな考え方だ。

■ストーリー
7年前、旭ヶ丘の中学校で起きた、クラスメイト9人の無差別毒殺事件。結婚を機にその地に越してきた私は、妻の連れ子である14歳の晴彦との距離をつかみかねていた。前の学校でひどいいじめに遭っていた晴彦は、毒殺事件の犯人・上田祐太郎と面影が似ているらしい。

この夏、上田は社会に復帰し、ひそかに噂が流れる―世界の終わりを見せるために、ウエダサマが降臨した。やがて旭ヶ丘に相次ぐ、不審者情報、飼い犬の変死、学校への脅迫状。一方、晴彦は「友だちができたんだ」と笑う。信じたい。けれど、確かめるのが怖い。そして再び、「事件」は起きた…。

■感想
給食の野菜スープに毒薬を混ぜ、クラスメイトを無差別に殺害しようとした少年・上田祐太郎。事件は過去のことだが、まだ地域では事件を忘れ去ることはできない。そんな場所へ引っ越してきたのは、40過ぎて結婚し、相手には連れ子の中学生がいる男だ。難しい年ごろの子どもとの親子関係の難しさ。

引っ越すきっかけとなった過去のイジメ事件。重松清作品にありがちな要素が詰まっている。ただ、無差別毒殺事件はミステリアスな要素が強く、作者っぽくないと思えた。

事件の犯人である上田が出所したという噂が立つ。そして、事件に使った毒薬であるワルキューレがまだあるのではないかとささやかれる。ここから、ワルキューレを使った事件が起きるのでは?という前振りがすばらしい。

そして、第一の犠牲者としては、主人公の隣に住むおせっかいなくらい毎週バーベキューを開くお父さんだ。ここで読者はなぜ?という疑問がわく。ワルキューレで殺されなければならない理由は、どうにも後付け感は強いが、それでも子供に殺される親というのは恐ろしくてならない。

主人公の息子が上田に似ているらしい。未だに父親とは敬語で会話する関係。非の打ちどころのないよい子な態度ばかりをみせられると、裏で何を考えているのかわからない恐ろしさがある。

もし、息子がワルキューレを隠しもっており、ひそかに自分の毒殺を企てていたとしたら…。実の息子でないだけに、その可能性を心配してしまう。ラストも、ワルキューレを駆け引きの材料とし、脅されることになる。次々と起こるワルキューレによる暗殺。まさに連続毒殺殺人事件のミステリーだ。

作者の作品の中では異色な部類に入るだろう。



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