ミステリー・クロック 


 2018.4.28      複雑難解なトリック 【ミステリー・クロック】

                     
ミステリークロック [ 貴志 祐介 ]
評価:3
貴志祐介おすすめランキング
■ヒトコト感想

防犯探偵・榎本シリーズの最新作。「硝子のハンマー」などと比べると、小難しいトリックの多いミステリー短編集だ。非常にトリックが難解だ。特に表題作でもある「ミステリークロック」は正直よくわからない。犯人は最初にほぼ判明しているが、トリックが複雑すぎてついていけなかった。防犯探偵の榎本や狂言回し役の女弁護士など、いつものキャラクターは登場してくる。

榎本が泥棒の本性を出さずに淡々と普通の探偵のようにトリックを解明しているのは意外かもしれない。短編の舞台はヤクザの事務所やアンティーク時計のある屋敷、そして深海と様々。それぞれが趣向をこらしたトリックなので、本格ミステリー好きであれば楽しめるだろう。

■ストーリー
防犯探偵・榎本径、史上最難の推理。時計だらけの山荘、奇妙な晩餐会。「事故死」は「秒単位で仕組まれた殺人」へ変貌する。

■感想
「ゆるやかな自殺」は、その他の短編と比べると随分とトリックはわかりやすい。ヤクザの親分が密室で殺されていた。前半部分である程度タネ明かしされるので、特別な驚きはない。その後の展開で唯一の目撃者と思わしき見習いヤクザが、なぜ自殺したのかがポイントだ。

かなりの酒好きで、毎日酒を飲むことを習慣としている。これが、自殺へと繋がる。オチがわかってしまえば、なんだか「ホントに?」と疑いたくなるような流れであることは間違いない。

表題作でもある「ミステリークロック」は、非常に難解だ。人里版れた山荘での殺人事件。密室。そして、電波のとどかない場所。衛星電話。時間によるアリバイ。まぁ、本格ミステリー好きがよだれを垂らして喜びそうな材料の数々。

コンセントを抜かれたPCに、複数の動力源をもつアンティークの時計。多数のアンティーク時計で、時間的なアリバイを成立させている。正直いうと、読んでいて頭が痛くなった。何がどうなっているのかわからず、ただひたすら字を追いかけていたという感じだ。

「コロッサスの鉤爪」は、海のど真ん中で人が死んだ。事故なのか、なんなのか。巨大な大王イカに海に引き込まれた説が有力となるのだが…。深海を探索していた者が怪しいというのは最初からわかっていた。どのようにして殺人を行ったかのプロセスが問題だ。

ミステリーのトリックとしてあっと驚くようなパターンではない。海のど真ん中で、ソナーで音を探知された状態は、いわば密室状態と変わりない。その状態からどのようにして被害者に近づいていったのか。オチが気になる流れであることは間違いない。

本格ミステリー好きならば楽しめるだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp