万引き家族


 2019.10.14      ぬめっとした夏の暑さ【万引き家族】

                     
万引き家族 通常版DVD [ リリー・フランキー ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
ボロボロの平屋で生活する老婆と息子家族と思われる者たちと年頃の少女。そこに虐待を受けた少女が入り込む。冒頭から父親とともに万引きを行う少年が登場してくる。これだけで何か訳アリの家族であることがわかる。実は平屋で生活しているのは、老婆の実の家族ではない。家族は年頃の少女ひとりだけ。他の者たちは勝手に集まった者たちだった。

一見すると貧乏ながらも仲のよい家族のように思える。実はお互いを利用しあう訳アリ家族。強烈なのは、実は少女の亜紀は老婆の夫を奪い取った女の孫だった。その他の者たちはみな赤の他人。子どもたちもどこからか連れ去られて来た者たちだ。ラストではその生活が途端に崩れ始めるのだが、このラストの流れが本作を名作にしているのだろう。

■ストーリー
高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活品は、万引きで賄っていた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。

体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。

■感想
寄せ集めの家族の物語としては「at home」がある。at homeは皆自分の意思で悪事に手を染め協力して生活していた。本作ではみながお互いを利用しあい、明らかに未来のないどろどろとした生活を続けている。

治と信代の夫婦にしても、どこか未来を諦めているようで、今だけが良ければそれで良いようなイメージだ。息子にまで万引きをさせ生活を賄っている。亜紀を含め、皆そのことをわかっていながら止めることはない。ひたすら生活のために万引きする少年と少女、そしてそれを率先してやらせる大人たちだ。

平屋で生活する者たちは皆わけありだ。老婆はすでに死んでいる別れた夫の元へ行き、その息子たちから金をせびる。衝撃的なのは、この息子夫婦の子どもが亜紀だということだ。亜紀は両親や妹に反抗しているのか、老婆の家で生活し妹の名前を源氏名として風俗店に勤務している。

とんでもない家族だが、今まではかろうじでうまくいっていた。それが、老婆が死にその死体を家の床下に埋めたあたりから物語はきな臭い方向に動いていく。ボロボロの平屋で巻き起こるすさまじすぎる家族の物語だ。

息子が万引きで捕まりそうになり、逃げる際に大怪我をする。その結果、警察沙汰となり…。疑似家族たちは息子を残して夜逃げをしようとするが…。すべてが明るみにでる。この衝撃はすさまじい。見ず知らずの者たちが1つ屋根の下で生活する。

逮捕される者あり、無罪放免となる者あり。最後の最後に信代が息子に対して、実は車の中から拾ってきたとカミングアウトする。本当の両親と生活すべきだというのだが…。何が正しいのかわからないが、妙にぬめっとした夏を熱さを終始感じる物語だ。

話題作だけに強烈なインパクトがある。



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