黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 


 2020.5.21      シリーズの中で最も心霊色が強い 【黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続】

                     
黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 [ 宮部みゆき ]
評価:3
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■ヒトコト感想
三島屋変調百物語シリーズ。新シリーズとしてスタートした本作。聞き手がおかちから富次郎へと変わり、より霊的な色が強くなっている。どの話も現在進行形ではなく、過去に話し手が経験した物語が語られている。霊的な恐怖の現象として語られ、なぜそのような現象が起きたかのタネ明かしがあるわけではない。

姑と嫁の中が悪いために、姑の呪いのようなものが最後の最後まで残っている。悲しい結末になりがちなのは間違いない。不思議な現象を科学的に解明するわけではなく、まるで言い伝えを聞いているような気分になる。不思議なものは不思議なまま終わっている。表題作については、序盤は耶蘇教の呪いのような印象があるが、物語として異世界に入り込んだような不思議な気持ちになるエピソードだ。

■ストーリー
江戸は神田の袋物屋・三島屋で続く、一風変わった百物語。 これまで聞き手を務めてきた三島屋主人・伊兵衛の姪のおちかが、めでたく嫁にいったので、次なる聞き手は伊兵衛の次男・富次郎に。 気さくで気がよく旨いもの好き、跡取りではないから「小旦那」と自称する富次郎。 おちかが聞き手だったころ、ふとした縁の導きがあって三島屋に入り、百物語の守り役となったお勝。 富次郎が幼いころから三島屋に奉公してきた古参の女中、おしま。この三人で語り手を迎え、新たな百物語の幕が開く。

再会した友が語り始める一家離散の恐ろしい運命(第一話「泣きぼくろ」) 村の女たちが<絶景の丘>に登ってはならない理由(第二話「姑の墓」) 妻子を失った走り飛脚が道中めぐりあう怪異(第三話「同行二人」) 異形の屋敷に迷い込んだ者たちを待つ運命(第四話「黒武御神火御殿」) 「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」 怖ろしくも愛おしい極めつきの怪異と不思議。心揺さぶる江戸怪談、新章突入!

■感想
「泣きぼくろ」は強烈だ。豆腐屋で一緒に生活する嫁が、義理の兄や弟に夜這いをかける。なぜか嫁にはその時だけ泣きぼくろがついている。結局のところこの泣きぼくろが全ての元凶だ。兄や弟の嫁が兄弟に夜這いをかける。当然ながらそれが知れると家族間はギクシャクしてくる。

父親はすべては自分の責任だと考える。ただ、最終的に泣きぼくろの現象の理由が説明されることはない。不思議な話ということで終わっている。この解決しないというのも不思議さをより高めている。

「同行二人」は飛脚が幽霊に付きまとわれる話だ。ただ、飛脚がどのようにして飛脚になったかまでが詳しく語られている。幽霊につきまとわれ、行く先々で小火が起きる。飛脚はどこで幽霊に取りつかれたかに気づき、その場でこの幽霊の正体を知る。

本作に収録されている他の作品に比べると、そこまで恐怖感はない。ただ、最初は火消しを目指していた男が飛脚になるまでの話は濃密だ。幽霊の話はどちらかというとオマケのような感じなのかもしれない。

表題作は強烈だ。博打狂いの男が謎の屋敷のある空間に閉じ込められてしまう。同じような状況になったのは男女6人。出口のない空間で、食べ物はあるのだが…。襖にマグマが噴き出る火山があるなど、とんでもない屋敷だ。

襖の火山からは火が噴き出しやけどもする。謎の武士が登場したりと恐怖の屋敷であることは間違いない。その屋敷には謎の半纏があり、そこにはあて布がされ謎の耶蘇教の呪文が描かれている。耶蘇教の恐ろしさというよりは、謎の屋敷としての怖さや不思議さの方が強烈だ。

より心霊色が強くなっている。



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