こちら横浜市港湾局みなと振興課です 


 2019.7.9      横浜みなとみらいを舞台に 【こちら横浜市港湾局みなと振興課です】

                     
こちら横浜市港湾局みなと振興課です /文藝春秋/真保裕一
評価:2.5
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■ヒトコト感想
横浜市の港湾局みなと振興課で働く暁帆が、様々な地域振興の仕事を通して問題を解決していく。舞台は横浜のみなとみらいなので、非常になじみ深い。暁帆はみなとみらいを走り回りながら、新人の城戸坂と共に問題を解決していく。作者のこの手のお仕事モノとしての面白さが凝縮されている。横浜市長のスキャンダルや内部の問題。そして、公共事業の暗部なども含まれており、能力の高い新人と共に暁帆が奔走する。

城戸坂の目的とすることは、どうにも理解不能だったが、それ以外の横浜の地域に関するトラブルについては非常に共感できた。他の地域の人が本作を読んだ時にどのような感想をもつのか。土地の開発についての問題は、もしかしたら自分が住んでいる場所なのでは?と思ってしまった。

■ストーリー
主人公は横浜市の港湾局みなと振興課で働く船津暁帆。ヨコハマ振興のため、舞い込んでくる大量の仕事に忙殺されている。猫の手でも借りたい状況の中で、配属された新人・城戸坂泰成は、国立大学出身のエリートで、様々な難題をパーフェクトにこなす有能な男だった。

カンボジアからの研修生の失踪事件や、フォトコンテストの応募写真を巡る謎、豪華客船「ダイヤモンド・テレジア号」体験ツアーでの幽霊騒ぎなど、数々のトラブルを暁帆と城戸坂の名コンビが乗り越えていく――。その過程で、二人は戦前の横浜の暗部を探り出す。「横浜港 大感謝祭」の開催が近づくなか、暁帆&城戸坂が辿りついた真実とは。

■感想
横浜を振興するために、暁帆は人手不足の中、必死で働く。上層部に人手不足を訴え続けた結果、優秀な新人・城戸坂が配属された。この城戸坂が新人離れした能力を発揮する。配属早々に手際のよい仕事ぶりを見せる。そして、トラブルを解決していく。

カンボジアからの研修生が失踪する事件では、横浜市長の肝入りの事業なだけに、不祥事は起こしたくない。そのために、市の職員たちは、必死にトラブルを解決しようとする。研修生が失踪する最近の事件を詳しく深堀しているような感じだ。

フォトコンテストで入賞した作品の中で、応募期間外に撮影された写真を入賞させてしまったという問題が発生した。応募者は意図せず期間外の写真を応募したのか。それとも何か意図があったのか。城戸坂が写真を分析し、撮影された時期を見つけ出す。

そして、応募者が意図的に古い写真を応募してきたとわかる。本作ではすべての短編の要素が最後の物語に繋がっている。城戸坂が人知れずひっそりと調べ続けたことは何なのか。東京出身でありながら、なぜあえて横浜なのかがポイントなのだろう。

横浜市の職員の中で不正を働いている者がいる。土地不正関連で、特定の民間企業に利益供与されている。不正を暴くために暁帆が動きだすのだが…。城戸坂の調査や市長が独自で調査している事柄も関連しており、最終的には不正が明らかとなる。

この不正に提供された土地というのが、もしかしたら自分が住んでいる場所なのでは?と思うほど身近な地域が物語のあちこちに登場してくる。みなとみらいを奔走する暁帆と城戸坂。横浜市やみなとみらいになじみのある人は読んでみると良いだろう。

テーマの舞台の重要さを実感する作品だ。



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