告白小説、その結末


 2020.2.29      作家に成り代わろうとする美しい女【告白小説、その結末】

                     
告白小説、その結末 [ エマニュエル・セニエ ]
評価:3

■ヒトコト感想
ベストセラー作家のデルフィーヌ。ある日、熱狂的なファンであるエルと出会う。一度ベストセラーを生み出したプレッシャーとネット上の心ない攻撃に精神を病みかけていたデルフィーヌを支えるエル。いつしか共同生活をはじめ、見栄えが良く明るく活発なエルはデルフィーヌが嫌がる仕事を積極的に助けたりもする。エルの目的の不明さが恐怖をかきたてる。

デルフィーヌから依頼された仕事を、エルはしっかりとやりきったと答えながら、実はやっていなかったり。エルはデルフィーヌを殺して、エルがデルフィーヌの立場を奪おうとしているようにすら思えてくる。エルの人生を新しい小説のネタとしようとしていたデルフィーヌなだけに、どこか後ろめたい部分があるのが本作のポイントだろう。

■ストーリー
心を病んで自殺した母親との生活を綴った私小説がベストセラーとなった後、スランプに陥っているデルフィーヌの前に、ある日、熱狂的なファンだと称する聡明で美しい女性エル<彼女>が現れる。差出人不明の脅迫状にも苦しめられるデルフィーヌは、献身的に支えてくれて、本音で語り合えるエルに信頼を寄せていく。

まもなくふたりは共同生活を始めるが、時折ヒステリックに豹変するエルは、不可解な言動でデルフィーヌを翻弄する。はたしてエルは何者なのか? なぜデルフィーヌに接近してきたのか?やがてエルの身の上話に衝撃を受けたデルフィーヌは、彼女の壮絶な人生を小説にしようと決意するが、その先には作者自身にも想像できない悪夢のような“結末"が待ち受けていた……。

■感想
売れっ子小説家に近づく異常者といえば「ミザリー」を思い出した。スランプに陥ったデルフィーヌを助けるエル。その助け方がまた絶妙だ。講演会や母校へのあいさつなど、外に出る仕事を嫌がるデルフィーヌ。それを知りながら、エルはデルフィーヌを助けつつ、自分がデルフィーヌのふりをして仕事をすると答えるエル。

がっつりおばさんの風貌のデルフィーヌと若くて美しいエル。ふたりが同一人物というのは無理があるが、作家の顔なんて誰も覚えていないという乱暴な理論を振りかざしている。

エルは無償でデルフィーヌに献身している。デルフィーヌはエルの人生の話を聞きながら、それが小説のネタになると考えている。エルの目的は何なのか。中盤以降からはエルはデルフィーヌに成り代わろうとしているのではないかと思えてくる。

家の地下室にはネズミが出るからと殺鼠剤を買ってきて、地下室に撒くようにデルフィーヌに依頼する。この場面でも、エルが地下室の扉を閉めてデルフィーヌを閉じ込めるのでは?と思ってしまった。

デルフィーヌは原因不明の体調不良に悩まされる。実はすべてエルが裏で動いていたことだった。殺鼠剤を少しづつ食事に盛られて体調を壊したデルフィーヌ。のちに判明したのはデルフィーヌが離れて暮らす夫に電話したり、近所との交流が持てないよう、全てエルが外部とデルフィーヌが連絡をとれないようシャットアウトしていたということだ。

エルの陰謀から逃れることができたデルフィーヌ。ただ、エルの目的は最後までよくわかならかった。いくらなんでもデルフィーヌになりきることはエルには難しいはずだが…。

エルの見た目が美しいだけに、より強烈な恐怖を感じてしまう。



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