ミザリー スティーヴン・キング


 2017.1.8      痛みと恐怖で支配する女 【ミザリー】

                     

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■ヒトコト感想
恐ろしすぎて寒気がしてくる作品だ。人気小説家のファンが、小説家を監禁し自分が思うような物語を描かせる。恐ろしいのは、異常者であるアニーの知能が高いということだ。監禁されたポールがあらゆる策を練ったとしても、それを瞬時に見破り、とんでもない制裁をポールに課す。アニーが抜け目なく、そして、アニーの機嫌を損ねた時の恐怖はすさまじい恐ろしさがある。

ポールに課せられる制裁は群を抜いている。ポールが繰り返し感じる苦衷と恐怖を考えると、何もかもが嫌になりアニーに従順にならざるお得ないのもうなずける展開だ。まるでパブロフの犬のようにアニーが道具を持ち出すと、ポールは制裁を与えられる恐怖で気が狂いそうになる。まさに、監禁され執拗に制裁を加えられた者の恐怖を描いている。

■ストーリー
不慮の自動車事故で負傷した人気作家ポール・シェルダンは、熱心な愛読者アニーに助けられるのだが、そのまま監禁され、彼女だけのための作品執筆を強要される。極限のファン心理が作家を襲う密室での戦慄の恐怖。

■感想
自動車事故を起こして足を骨折した小説家のポール。そんなポールを拾って監禁したのがアニーだ。このアニーの異常さ具合が恐ろしい。アニーの制御下におかれたポールの苦悩はすさまじいものだ。アニーの提案に少しでも反発しようものなら、手痛いお仕置きが待っている。たとえポールが正しいとしても、アニーはポールに言い負かされることが許せない。

アニーの制裁は徹底している。痛み止めの薬を渡さないことや、ポールをひとり家に放置する。空腹が限界を超え、骨折の痛みを忘れるほどの喉の渇きが限界となる。ポールが死ぬ寸前まで追い詰めるのがアニー流だ。

アニーが外出するとポールにチャンスが訪れる。家の中を車いすで移動し、痛み止めの薬をかすめ取ることがまず第一の目標だ。ポールのすさまじい緊張感は読者にはっきりと伝わるだろう。アニーに見つかるとどのような制裁が待っているのか。アニーにごまかしはきかない。

ポールが知恵を働かせたとしてもアニーを丸め込むことはできない。アニーが妙に知的で、ポールの策略に気づくことろが恐ろしい。頭がきれる精神異常者ほどやっかいなものはない。まともに話は通じないが、言いくるめることはできない。恐怖でしかない。

アニーのエスカレートする仕置きが強烈だ。読んでいて吐き気をもよおすほどだ。自分がポールと同じ状況になったら、たとえ助けを呼べる瞬間がきたとしても、アニーにばれたらと考え、その後の制裁を想像すると、声をだすことはできないだろう。

あの苦しみと恐怖をもう一度味わうなら、甘んじて今の状況を受け入れ、ただアニーが不機嫌にならないようひたすら従順に過ごすかもしれない。ある意味、恐怖により相手を支配することができている状況だ。ポールが死をも覚悟し、今までの恨みをアニーにぶつけるシーンは、ある意味爽快かもしれない。

アニーの異常性が、物語の恐怖感を増大させている。



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