岸辺露伴は戯れない 


 2019.7.30      ヘブンズドアーが通じない敵 【岸辺露伴は戯れない】

                     
岸辺露伴は戯れない 短編小説集 [ 荒木 飛呂彦 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「岸辺露伴は叫ばない」から引き続き岸辺露伴が主人公となって戦いを繰り広げる。ジョジョの奇妙な冒険自体がミステリー色は強いのだが、この岸辺露伴シリーズは群をぬいてミステリアスだ。箱に閉じ込められる話などは、古今東西、恐怖ミステリーでありがちなパターンかもしれない。ヘブンズドアーで相手を本にして命令を書き込む。

少年ジャンプに連載当初は無敵の能力だと思っていたのだが…。本作ではあっさりと破られたりもする。意思の力が強いと、ヘブンズドアーで書き込んだ命令もすぐに消えてしまうらしい。となると、あとは偏屈な性格である露伴がどのようにして相手をやりこめるかにかかっている。露伴はスタンド使いではあるが、物理的な攻撃よりも精神的な対決がメインだ。

■ストーリー
杜王町在住の人気漫画家・岸辺露伴。自らの作品を読んでもらうためには一切の妥協を許さず、あらゆる犠牲も厭わない男が、見えざる引力に誘われてめぐり逢う、謎めいた怪異の数々とは…!?大人気『岸辺露伴は動かない』シリーズ待望の短編小説集が、完全無比のクオリティで登場!!『幸福の箱』『シンメトリー・ルーム』『夕柳台』に、書き下ろし『楽園の落穂』を加えた4つのストーリーを収録。

■感想
「幸福の箱」は、岸辺露伴が呼び出された先の古美術商の家で様々なトラブルに巻き込まれていく。露伴がはめられたのかと思いきや、古美術商の妻には別の思惑があった。ヘブンズドアーだからこそ成り立つ物語だ。

箱に閉じ込められるというのが、ミステリーにはありがちなパターンではある。ただ、狂気の妻の存在が、より恐怖感を倍増させている。露伴をあからさまに敵対視するのではなく、相手が古美術商だからこそ露伴が事前に仕組んでおいた命令が効果をはっきしたパターンだ。

「シンメトリー・ルーム」はジョジョらしい恐ろしさがある。あるマンションの一室で人がアジの開きのようにされて殺されていた。興味本位で事件を調査する露伴なのだが…。シンメトリーをこよなく愛する異常者が登場してくる。非対称を嫌悪し対称を愛する男。

この極端なパターンは、ジョジョらしい。露伴は男の策略でシンメトリールームに監禁されてしまい、そこで非対称の部分を次々と対称にされていく。人間の体が非対称なのは当然として、それを無理やり対称にしようとする異常性はすさまじい。

「楽園の落穂」は、ジョジョの第四部をベースにしていることから、トニオのレストランを思わず思い出してしまった。小麦アレルギーのある編集者の娘。アレルギーのある娘でも食べることができる小麦が開発されたと聞き、編集者や娘と共に露伴は険しい道のりを行く。

まず、この小麦で作ったパンがとてつもなくうまいらしい。このあたりの描写はトニオのレストランに近いのかもしれない。トニオの例があるだけにアレルギーでも影響のない小麦がスタンドが絡むことで作られたかと思いきや…。小麦に人間が支配されるという恐ろしい展開となっている。

岸辺露伴の物語は、行きつくところまで行くと、わけがわからなくなりそうだ。



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