君たちは絶滅危惧種なのか? 


 2022.1.27      バーチャルの世界で生きられれば肉体はいらない 【君たちは絶滅危惧種なのか?】

                     
君たちは絶滅危惧種なのか? Are You Endangered Species? [ 森博嗣 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ウォーカロンシリーズ。今回はグアトが動物園での事件を調査する。釣りをしていた男が大型動物に襲われ怪我をした。動物園内ではスタッフが殺される事件が発生した。見た目は人間と変わらないウォーカロンが存在する世界の中で、動物のウォーカロンが存在してもおかしくない。グアトが人工知能と会話をしながら事件を調査する。

本作のメインテーマの一つである、人間の存在意義が今回も描かれている。科学者たちは脳をバーチャルに移植しバーチャルの中だけで生きる。現実の肉体を放棄しても、バーチャルの中で生きていけるというのは究極な状態かもしれない。人間の脳を丸ごとバーチャルに移植できれば、人は何かと制限になる肉体を捨ててもよいと考えるのだろう。

■ストーリー
国定自然公園の湖岸で、釣りをしていた男性が襲われ大怪我を負った。同公園内の動物園では、1カ月ほどまえスタッフ一人が殺害され、研究用の動物とその飼育係が行方不明になっていた。二つの事件以前から、湖岸で正体不明の大型動物が目撃されており、不鮮明ながら映像も存在した。兵器使用を目的とした動物のウォーカロンか? 情報局の依頼を受け、グアトらは動物園へ赴く。

■感想
湖岸で正体不明の大型動物が目撃された。動物のウォーカロンであれば、兵器にも転用できる。グアトは調査の過程で、シャチのウォーカロンや動物のウォーカロンを目撃する。人間のウォーカロンは様々な役に立つのは間違いない。

動物のウォーカロンにはどのような目的があるのか。グアトは調査の過程で、様々な妨害にあう。ミサイルを撃ち込まれたりもする。どのような状態にあっても、グアトはかなり冷静に対処している。ウォーカロンの方が慌てるような感じになっている。

グアトはバーチャルの世界と現実の世界を行き来している。バーチャルの世界の快適さを味わいつつも、現実の肉体があるので、それが逆に危険性があると考えている。バーチャルの世界にいる間は肉体は無防備になる。もし、その時を狙われたらどうしようもない。

グアトは研究者たちがバーチャルの世界で研究することに魅力を感じていることに気づく。事件を深堀していくと、科学者たちがバーチャルに引きこもっていることに気づく。これが本作の言いたかったことなのだろう。

人間の脳がバーチャルに移植可能だとしたら。。人間はもう肉体をもつ意味がないのかもしれない。バーチャルの世界で何の制約もなく研究を続けることができるとしたら。研究者のように脳を使うことを主とする者にとっては理想的な展開なのだろう。

その時に足かせになるのは現実の肉体だが、それすらもなくすことに成功したとしたら…。まさに恐ろしい世界が。未来では実現可能かも、と思わせる説得力があるのが本シリーズの特徴なのだろう。

バーチャルの世界に引きこもるのは、マトリックス的な感じなのだろうか。。



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