2021.8.14 美少女がミステリ小説を書く 【君に読ませたいミステリがあるんだ】
君に読ませたいミステリがあるんだ [ 東川篤哉 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「放課後はミステリーとともに」の鯉ケ窪学園を舞台にした物語。第二文芸部の部長である水崎アンナが、新入生の僕に無理やり自作のミステリを読ませる流れだ。短編としてはアンナが書いたミステリ小説ごとに分かれている。高校生が書いたミステリということで、あちこちに穴がある。それを僕が指摘すると、アンナが無理やりな後付けをする。基本はこのパターンだ。
ミステリのトリックとしては新しいものではない。中身にしてもシリアスというよりは、学園の日常ミステリというような感じだ。ちょっとしたギャグがあり、自称美少女のアンナが、僕に無理やりミステリを読ませ続ける。ラストでちょっとしたどんでん返しがあるが、それは大きく驚くようなものではない。
■ストーリー
舞台は『放課後はミステリーとともに』の鯉ケ窪学園。高校に入学したばかりの僕は「第二文芸部」の部室に迷いこんでしまう。学園一の美少女(自称)である部長・水崎アンナは、自作のミステリ短編集を強引に僕に読ませるのだが――。桜舞い散る季節に起きた『音楽室の殺人』、ハンドボール部員が襲われる『狙われた送球部員』、女子更衣室が舞台の『消えた制服女子の謎』……アンナがたくらむ大仕掛けを、僕は、そして君は見抜けるか!?
■感想
東川篤哉のライトなミステリ短編集。鯉ケ窪学園を舞台にした学園ミステリなのだが、そのミステリは第二文芸部の部長である水崎アンナが描いた作品だ。アンナひとりしかいない第二文芸部に偶然立ち寄った僕がアンナからミステリを読まされることになる。
ここで僕がミステリの矛盾や違和感をおぼえたことについてアンナに突っ込み、その都度、アンナが無理やりな後付けの理由を話すというのが流れとなっている。ミステリ的なトリックとしての面白さはない。学生生活の中で発生するちょっとした謎が描かれている。
「音楽室の殺人」は、音楽室で音楽教師が殺害された。誰が犯人なのかという謎を解き明かすミステリなのだが…。桜の花びらが犯人の逮捕のきっかけとなる。作中では、水崎アンナではなく水咲アンナが主人公となり、事件を解決していく。
美人女子高生という描写があり、いかにもな雰囲気で現実の水崎アンナとは別人のような描かれ方をしている。コメディの要素としては、とりたてて笑えるような作品ではない。くだらないやりとりが続き、ラストではその矛盾について、僕が指摘しアンナが老獪するというパターンだ。
ラストでは一連の水崎アンナ作の小説を読ませていた理由が語られる。ここで、さも大きな謎のような展開となってはいるが…。アンナが僕に読ませた小説の順番が現実の季節とは微妙にずれていることがどれだけ重要なのか。叙述トリック的に、季節を連想させる記号は登場するのだが、そのものずばりの季節は言及していない。
だから何?という思いがある。また、実はアンナが僕のことを好きだったというオチもある。僕に第二文芸部に入ってもらい仲を深め、OGとして訪問したいという思いがあったのだろう。
いつもの鯉ケ窪学園シリーズの雰囲気はある。
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