彼女は宇宙服を着て眠る 


 2021.2.24      過去の短編のよせ集め 【彼女は宇宙服を着て眠る】

                     
彼女は宇宙服を着て眠る / 辻仁成
評価:3
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■ヒトコト感想
過去に他の作品で収録された短編がまとめられた本作。すべてが辻仁成の作品ではないので、辻仁成作品しか読んでいない人にとっては新作と変わらないだろう。「愛の工面」についてはオリジナルの「愛の工面」から写真を除いた形で収録されている。そのため、だいぶん印象が変わっている。それぞれの短編は愛の工面以外は短いのでサラリと読める代わりに印象に残らない。

表題作である「彼女は宇宙服を着て眠る」は、挙式を終えた僕が深夜3時にホテルを抜け出し、海辺で見知らぬ女性と出会う物語となっている。どのような感想をもつかはその人の現在の心理状態に影響されるのだろう。自分の中では、ちょっとありえないと思えて仕方がなかった。

■ストーリー
タニアとレナ、スターを追いかけ金も尽きた二人の死を留めたものは?(「朝はいつだって歯磨きから始まる」)。結婚式の夜に、新郎が新婦を部屋に残して一人の女と出会う表題作。砂漠に呑まれた三つの人生の輝きを描く「超越者」他、「愛の工面」も再録。真実の愛は人を死に追いやるのか、希望にみちびくのか?七つの愛と情熱を描く小説集。

■感想
「超越者」は印象的な作品だ。砂漠で偶然にも重なり合って死んだ者たち。その者たちにはどのような理由があったのか。特別3人を結びつける理由はない。ただ、個々が死ぬにいたるまでの理由が語られている。

人生にあきらめ死に場所を探していた男が、偶然砂漠の真ん中で墜落したセスナを見つけ出す。セスナのパイロットと思わしき女性はもう死ぬ寸前となっていた。最後に彼女の名前を呼ぼうとする男は、名前の手がかりを探し出そうとし。。男が女の名前を呼ぶ場面は少し感動した。

「愛の工面」は写真がなくなったことで、まるで別の作品のように思えた。写真家の女性と元恋人の小説家との恋愛を描いた作品。作中に登場してくる働く者の背中を撮った写真というのは、おそらくオリジナルだとそのものの写真がのっていたのだろうが、本作を読み進める中では、自分で都合の良いように想像してしまった。

様々な働く人の背中というのは確かに圧倒される何かがあるだろう。背中だけで何かを物語っている。演説中の政治家の背中が張りぼてという皮肉まで追加されている。

寄せ集めの短編なので、特別な括りがあるわけではない。何か特別な書下ろしがあるわけでもないので、新作に飢えていた人はがっかりするかもしれない。あとがきには作者の近況的なものがのっているので、それを楽しむのは良いのかもしれないが…。

作者のファンであれば、短編でも逃さず読みたいという思いがあるのだろう。過去の作品を忘れていれば新鮮な気持ちで読むことができるかもしれない。自分の場合は愛の工面はまったくの新作として読むことができた。

作者のファンならば読んでも良いだろう。



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