カエルの小指 


 2020.6.2      あちこちで「何かおかしい」と感じる流れ 【カエルの小指】

                     
カエルの小指 a murder of crows[ 道尾秀介 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
詐欺師の物語。「カラスの親指」から続くのだが、詐欺師から足をあらった武沢が主人公だ。キョウという中学生女子の希望を叶えるために武沢とその仲間たちが奮闘する。物語として大どんでん返しがあるのは間違いない。物語がクライマックスに近づいていき、キョウの母親の仇をとるために武沢たちは行動する。すべてがうまくいきそうな流れなのだが、そこでふと気が付いてしまう。

残りページ数が1/3も残っている状態であれば、まだ2転3転するのだろうと想像してしまう。となると、武沢たちの計画がすべて相手側にバレて手痛いしっぺ返しを食らうのではないかとドキドキしながら読んだ。元詐欺師である武沢が、キョウにあべこべに騙されてしまう。最後はちょっとほっこりするような流れだ。

■ストーリー
詐欺師から足を洗い、口の上手さを武器に実演販売士として真っ当に生きる道を選んだ武沢竹夫。しかし謎めいた中学生・キョウが「とんでもない依頼」とともに現れたことで彼の生活は一変する。シビアな現実に生きるキョウを目の当たりにした武沢は、ふたたびペテンの世界に戻ることを決意。そしてかつての仲間―まひろ、やひろ、貫太郎らと再集結し、キョウを救うために「超人気テレビ番組」を巻き込んだド派手な大仕掛けを計画するが…。

■感想
「カラスの親指」から続く物語。詐欺師であった武沢は改心してまっとうな仕事をしようとする。詐欺師としての口のうまさを生かして実演販売員として成功しかけるのだが…。そこで生意気な中学生女子であるキョウと出会う。

不幸な生い立ちのキョウ。詐欺師に騙され母親が自殺したキョウに同情する武沢。このあたりから読者はいくつかの不自然な部分に気づく。金を手に入れるために実演販売のノウハウを武沢から得ようとするキョウ。もっとべつの方法があるのではないかと思ってしまう。

キョウの母親の仇をうつために、詐欺師をはめようとする武沢たち。仲間と共に、詐欺師を討伐するテレビ番組に訴え出ることにする。番組にでるためにあえて詐欺師に騙され、番組に申し込む。そこからキョウの母親が騙されて奪われた金を取り返す三段まで立てるのだが…。

あまりに大掛かりな仕掛けに対して得るものが少ない。もっと効果的な方法があるのでは?と思った。なぜキョウがわざわざ武沢たちを詐欺師討伐の番組に出演させようとしたかは、番組のMCに関係があったからと後になってにわかる。

物語の終盤ではキョウの計画がすべてうまくいくかと思いきや、ここで武沢たちがキョウに騙されていたとわかる。キョウの真の目的は別のところにあった。キョウの目的を誰も知らないまま、キョウの作戦に無理やりのせられ武沢たちは協力した。

キョウの目的は最後まで達成されなかった。ただ、物語としてはある意味ハッピーエンドなのだろう。キョウの母親に関しても、序盤からある一つの方向に誘導されていたので、読者を含めてすべての人が騙されていたということだろう。

ラストのどんでん返しは「カラスの親指」ほどではないが強烈だ。



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