イノセンス


 2021.6.8      少女アンドロイドの無表情が恐ろしい【イノセンス】

                     
イノセンス[ 大塚明夫 ]
評価:3

■ヒトコト感想
「攻殻機動隊」の続編にあたる本作。前作で電脳の世界に行方不明となった草薙がどの段階で再登場するのか。アンドロイドの暴走事件を捜査するバトーとトグサ。人間とロボットが身近で接する世界であり、ロボットがかなり人間に近く電脳世界ではバーチャルとリアルの線引きがなくなりかけている。暴走したアンドロイドの見た目が恐ろしすぎる。日本人形のような少女の姿をしているのだが無表情で攻撃を繰り返す。

胸元を開き、あばら骨を開くような形で内部を披露する。バトーですら自分の電脳をハッキングされ暴走事件を起こす直前で止められる。ラストの舞台が北方領土の択捉というのもなんだか恐ろしい。巨大な戦艦内部での電脳とリアルが融合した戦いは強烈だ。

■ストーリー
西暦2032年、人とサイボーグ(機械化人間)、そしてロボット(人形)が共存する近未来。そこで人間のために作られた愛玩用アンドロイドが、原因不明の暴走を起こし所有者を殺害、その後、アンドロイドは自壊し、電脳は初期化されるという未曾有の事件がわずか1週間に8件も続発した。

テロの可能性を察知した公安九課の荒巻は、メンバーに事件捜査の命令を下した。相棒のトグサとともに、問題のアンドロイドの捜査のため所轄署に向かったバトーは、鑑識課の検死官ハラウェイから、人間と人形の関係性についての持論を聞かされる。「人間は、何故こうまでして自分の似姿を作りたがるのか…」。その帰り際、沿岸のボートハウスで、ロクス・ソルス社のアンドロイド出荷検査官が殺害されたとの知らせが舞い込んだ。

暴力団“紅塵会"が組長をアンドロイドに惨殺された報復…ロクス・ソルス社と紅塵会の繋がりとは…この殺人事件をきっかけに、アンドロイド暴走事故は、バトーとトグサの専従捜査に切り替えられる。事件の黒幕を誘い出すため、紅塵会に殴り込んでド派手な銃撃戦を繰り広げるバトー。だが、その後バトーは何者かのハッキングによって暴走、日も変わらないうちに食料品店で銃を乱射する不祥事を起こす。公安九課の存在意義を問われる事態…だが、荒巻が下した決断は、組織的支援なしで捜査続行だった。ロクス・ソルス社に直接当たるしかない…バトーとトグサは、事件の真相を解明すべく、極東の北端、択捉へと向かうのだが…。

■感想
愛玩用として重宝されていたアンドロイドがある日暴走し持ち主を殺害する。現実の世界でも起こりそうな近未来に思えてくる。「攻殻機動隊」のようにITが進化した世界では、行方不明となった草薙も電脳の世界のどこかで生きていると想像ができる。

本作ではアンドロイドの秘密を調査するためバトーが動き出す。電脳の世界でありながら、昔ながらのヤクザ組織は存在する。ただ、バトーたちからするとリアルなヤクザなどは敵ではないのだろう。組長がアンドロイドに惨殺されたヤクザ組織に押し入るバトーが強烈だ。

全編通して電脳の表現力がすさまじい。ひと昔前の作品ではあるが、古さを感じない。それは「攻殻機動隊」の時にも感じたことだが、すでにこの時代に近未来のことをほぼ正しく映像化しているのがすばらしい。ある意味、答え合わせのような感覚で本作を見たのだが、ありえそうな未来ばかりが描かれている。

すべてがネットにつながった世界であり、機械化人間であるバトーは、ハッキングされ暴走してしまう。本人がぼんやりしていたから、という描写があるのだが…。リアルに起こりそうな暴走事件だ。

ラストは択捉島に横付けされた戦艦内部で戦いが繰り広げられる。バトーたちを妨害するのは日本人形のような少女アンドロイドたち。どれだけ倒したとしても次々と舞い降りてくるアンドロイド。その中の一台に草薙がハッキングして入り込む。

違いを表現するために草薙の少女アンドロイドだけベストをつけているのが良い。ラスボスを含め電脳に支配された世界ではあるが、リアルな部分での映像が恐ろしい。人間ではなくアンドロイドの無表情な攻撃というのは、それだけで恐怖感がある。

映像的なインパクトもそうだが、ストーリーが強烈だ。



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