祈りの幕が下りる時


 2019.9.10      異常な親子関係【祈りの幕が下りる時】

                     
祈りの幕が下りる時 [ 阿部寛 ]
評価:3

■ヒトコト感想
原作はすでに読んでいる。加賀シリーズの最後を飾るにふさわしい重工な物語だった。そんな原作をドラマから引き続きの俳優たちが演じている。正直、原作の濃密な内容を2時間の映画におさめるのはかなり苦労したことだろう。ストーリーとして不足なく描かれてはいるが、駆け足で概要だけをサラリとなぞったような印象がある。

衝撃的な事件であり、ラスト間近では26年前の出来事が現在にまでつながる形は衝撃的だ。ただ、原作を読んだ時に感じた「容疑者Xの献身」に近いという印象は、映画版ではより強く感じた。親が子を思う強い気持ち。それが行き過ぎると最後には衝撃的な結末となる。豪華出演者とドラマの印象があるのですんなり入り込め、時間を忘れて楽しめたのは間違いない。

■ストーリー
この事件は俺の過去と関りが強すぎる。事件のカギは俺なのか・・・?東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。被害者は滋賀在住の押谷道子。殺害現場となったアパートの住人・越川睦夫も行方不明になっていた。やがて捜査線上に浮かびあがる美しき舞台演出家・浅居博美(松嶋菜々子)。しかし彼女には確かなアリバイがあり、捜査は進展しない。

松宮脩平(溝端淳平)は捜査を進めるうちに遺品のカレンダーに日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることを発見する。その事実を知った加賀恭一郎(阿部 寛)は激しく動揺する。それは失踪した加賀の母に繋がっていた--。

■感想
女性の絞殺死体が発見されることから物語はスタートする。序盤ではまだ事件の仕組みが明らかとはならず、松宮がひとり気を吐いて、数々の新たな証拠を見つけ出す。複数の事件が実はつながっていた。松宮と加賀が見つけだした新たな真実。

それら事件関係者とのつながりを紐解いていくと、舞台演出家の浅居が浮かび上がる。事件は一見複雑だが、ひとつの謎が解けるとすべてがスムーズに理解できる。序盤から浅居が怪しい雰囲気をぷんぷんにおわせている。その怪しさは最後まで消えることはない。

加賀の地道な捜査はすさまじい。執念ともいえる捜査で、自分がこの事件の関係者に含まれることを知る。浅居と加賀をつなぐ意味は何なのか。物語のポイントは身元不明の焼死体の正体だろう。これが判明したのち、その焼死体と浅居の関係が判明すると衝撃を受ける。

加賀と浅居の対決シーンはまさに本作の盛り上がりのピークだろう。浅居は加賀の質問をのらりくらりとかわすが、実はすべて加賀は事前に裏取りをすませていた。浅居の鬼気迫る表情は、まさに松嶋菜々子の女優魂を感じた。

26年前に何が起きたのか。これまた衝撃的な展開だ。親は子供を守るためには、自分の存在すら消すことができる。これはまさに「白夜行」の雰囲気にも近い。子どもを守るためには、親はどんなことでもする。子どもはそのことを知らず平和に暮らす。

成長した浅居は親のことを忘れることは絶対にない。そして、親が望むことを実行しようとする。ラストの展開は、いくら親の望みとはいえ、普通の人間ならば絶対に実行できないことだ。ある意味、この親子の関係は異常だったのだろう。

松嶋菜々子の演技は強烈だ。



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