インドラネット 


 2021.11.7      親友は反政府組織のカリスマになっていた 【インドラネット】

                     
インドラネット [ 桐野夏生 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
平凡な派遣社員である八目。高校時代にイケメンでカリスマ性のある空知と知り合い親友となる。その輝かしい高校時代をよりどころとして、カンボジアで行方不明となった空知を探しだそうとする。序盤から不思議な展開が続いていく。空知と姉と妹の3人がそれぞれカンボジアで行方不明となる。空知の父親の葬儀で怪しげな人物から空知を探すように依頼される。

内気で覇気のない八目は後ろ向きな理由からカンボジアへ向かうのだが…。そこで衝撃的な真実を知る。実は空知はカンボジアの反政府側のカリスマリーダーであった。その生死を様々な勢力が探っていた。八目は利用されていたということなのだが、ラストの空知との出会いとその後の結末は衝撃的だ。

■ストーリー
平凡な顔、運動神経は鈍く、勉強も得意ではない――何の取り柄もないことに強いコンプレックスを抱いて生きてきた八目晃は、非正規雇用で給与も安く、ゲームしか夢中になれない無為な生活を送っていた。唯一の誇りは、高校の同級生で、カリスマ性を持つ野々宮空知と、美貌の姉妹と親しく付き合ったこと。だがその空知が、カンボジアで消息を絶ったという。空知の行方を追い、東南アジアの混沌の中に飛び込んだ晃。そこで待っていたのは、美貌の三きょうだいの凄絶な過去だった……

■感想
美しい空知と姉と妹の3兄弟。八目は空知たちへのあこがれと、空知たちと仲良くしていた黄金の高校時代を思い出すためにカンボジアへ向かう。八目は派遣社員としてやる気がなく、何の目標もない。日々ゲームをして過ごす人生を変えるためにカンボジアへ旅立つ。

空知を探すという目的はあるにせよ、理由は後ろ向きだ。現実から逃げるために空知を利用している感がある。カンボジアで何の準備もなく金を盗まれ、空知を探すプランが何もない。客観的に見ると八目は何事にも甘く考えすぎのような気がしてならない。

カンボジアでの八目は様々な状況が待ち受けている。空知が実は反政府側のリーダーだったこと。そして暗殺されたこと。空知を探させるために八目は利用されていた。現地で親切にしてくれたヤクザの木村やゲストハウスの従業員、そしてバックパッカーの鈴木らはすべて政府から空知を探すように依頼された者たちだった。

どこまでが政府の手が入っているのかわからないのが不気味だ。八目が空知の親友だからと、最初からすべて仕組まれていた。それでも八目は空知の墓を見に行った時に、空知が生きているような言葉を聞くことになる…。

空知と会うためには、様々なハードルがある。誰が空知の味方で誰が政府側なのかわからないまま、ひたすら指示を待つしかない八目。そこから、しびれ薬を飲まされたり、監禁された末に空知と出会うことに成功するのだが…。

空知は目の前で爆撃を受けたため、両目がなくなり顔や体も別人のようになっていた。この衝撃的な空知との出会いから、さらにラストはより強烈な展開となる。何もかもどうでもよくなった八目。空知をめぐる様々な出来事はどこまでが仕組まれたものかがわからないあたり、強烈な引きの強さがある。

ラストの展開は衝撃的すぎる。



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