her 世界でひとつの彼女


 2019.12.30      近未来の恋愛物語【her 世界でひとつの彼女】

                     
her/世界でひとつの彼女 [ ホアキン・フェニックス ]
評価:3

■ヒトコト感想
近未来の世界で男がAIに恋をする。一昔前のSFのようだが、本作の未来はそう遠いものではないと感じてしまう。離婚したセオドアは寂しい日常を埋めるため最新のAIのサマンサを恋人として真剣に向き合うことにする。もしかしたら、近い将来同じようなことがすぐに起きるかもしれない。本作では、AIとしては持ち運び型のIpadのような小さな機器が携帯端末となり常にセオドアと会話をする。

映像がないだけに想像力を掻き立てるのかもしれない。映像がない音声だけの恋人となっているが、未来では間違いなく映像付きとなることだろう。サマンサは人間的な考え方を学びセオドアのことを愛するようになる。となると、この愛はAIが学習したものなのかどうなのかと考えてしまう。

■ストーリー
人生にときめく、AI(人工知能)声だけの君と出会って、世界が輝いた。そう遠くない未来のロサンゼルス。ある日セオドアが最新のAI(人工知能)型OSを起動させると、画面の奥から明るい女性の声が聞こえる。彼女の名前はサマンサ。AIだけどユーモラスで、純真で、セクシーで、誰より人間らしい。セオドアとサマンサはすぐに仲良くなり、夜寝る前に会話をしたり、デートをしたり、旅行をしたり…

一緒に過ごす時間はお互いにとっていままでにないくらい新鮮で刺激的。ありえないはずの恋だったが、親友エイミーの後押しもあり、セオドアは恋人としてサマンサと真剣に向き合うことを決意。しかし感情的で繊細な彼女は彼を次第に翻弄するようになり、そして彼女のある計画により恋は予想外の展開へ――!“一人(セオドア)とひとつ(サマンサ)”の恋のゆくえは果たして――?

■感想
AIが恋人というと普通は引いてしまう。現実の女にはまったく相手にされないために二次元に逃げるようなイメージだろう。典型的なオタクが陥る罠のような気がした。本作ではセオドアはしっかりとした収入もあり自立した男ではあるが、離婚したばかり。

悲しみをいやすためにサマンサを恋人とする。誰よりも人間らしいと感じるセオドア。親友の後押しもありセオドアはサマンサと付き合うことになるのだが…。サマンサはOSのため、あらゆる情報を手に入れることができる。当然ながらセオドアのメールを一番に読むのもサマンサだ。

セオドアとサマンサの仲が親密になればなるほど、サマンサに現実の肉体がないことを歯がゆく思うセオドア。ここから驚きの展開となる。サマンサはネットに自分とセオドアの情報をのせ、それに共感した生身の人間を連れてくる。

その女のことをサマンサ自身だと考えるようにセオドアに伝える。この手のパターンは「ブレードランナー」にもあったが、あっちは完全にコンピュータが肉体に乗り移ったような感じだ。本作では生身の人間はそのまま我慢している状態となる。かなり異常な状況だ。

セオドアとサマンサの関係に別れが近づく場面がある。それは、セオドアが気づいたタイミングだ。サマンサはOSとして進化しAIとしても高度化していく。となると、セオドアひとりのサマンサではなく、同時に複数の人間と会話できる多機能なAIへと進化していく。

セオドアからすると、サマンサに浮気をされているような気分だろう。サマンサはセオドアと愛を語り合いながら、一方では何千人もの人とたわいもない会話を繰り広げている。いくらサマンサが取り繕おうとも、セオドアの気持ちが戻ることはない。

近未来の悲しい恋愛物語だ。



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