運び屋


 2021.1.12      平然と人種差別の言葉をはくアール【運び屋】

                     
ワーナー ブラザース 運び屋
評価:3

■ヒトコト感想
2回目の視聴。前回と同様に嫌味なジジイ役は強烈なインパクトがある。クリントイーストウッドが現代の最新テクノロジーについていけずにスマホばかり見る者たちに苦言を呈している。この嫌味が最高だ。ストーリー的なものよりも、キャラクターがより強く印象に残る。氷の自販機から氷がでないので、怒りながら自販機を蹴る男に対して、「携帯電話を置いたらどうだ?」という言葉をはく。

さらにはパンクが修理できない黒人に対して、そのまま「ニグロ」と言ったり、メキシコ人に対して「タコス」と言ったり。相手の困惑した表情がまた最高だ。根は良い人なのだが、口が悪い。頑固な老人の典型であるアールのキャラが本作の全てだろう。

■ストーリー
イーストウッド演じるアール・ストーンは90歳の男。家族と別れ、孤独で金もなく、経営する農園には差し押さえの危機が迫っていた。そんな時に、ある仕事が舞い込む。ただ車を運転すればいいだけの訳もない話だ。しかしアールが引き受けてしまったのは、実はメキシコの麻薬カルテルの“運び屋"だった。たとえ金銭的な問題は解決しても、過去に犯した過ちが、アールに重くのしかかってくる。捜査当局やカルテルの手が伸びてくる中、はたして自らの過ちを正す時間は彼に残されているのか。

■感想
家族をないがしろにしてきた男が、家族の大切さに気付く物語だ。序盤のアールはまさに典型的な頑固おやじだ。恐らくは家族から相当いろいろと言われたのだろうが、それらには耳をかさず、ひたすら自分の思い通りに人生を生きている。

気づいた時には周りには誰もいない。孫の結婚式に参加しても家族から疎まれるというのは相当な状態なのだろう。奥さんや娘からの冷たい言葉の数々が、アールがそれまでやってきた行いの悪さということなのだろう。ここまで家族から嫌われる晩年というのも悲しいものだ。

アールはひょんなことから麻薬を運搬する仕事をし始める。最初は無邪気に車を運転しているだけでよかったのだが…。アールの飄々とした態度が最高だ。誰に対しても態度が変わることはない。麻薬カルテルのメンバーもいつの間にかアールに感化されていく。

特にアールの監視役を受けもった男は、最初はアールに対して厳しくあたっていたが、一緒にポークサンドを食べる場面では、いつの間にか打ち解けたりもしている。レストランでメキシコ人だからジロジロとみられる状況に対しても「白の中にタコスがいるから」と人種差別丸出しの言葉を続けるのが最高だ。

2回目であってもどのような結末になるかハラハラドキドキしてくる。妻の死を看取ることができたアールは、そのために薬物運搬のルールを破ることになる。組織から狙われるのだが…。そこで潔く制裁を受けようとする姿はすさまじい。

麻薬取締官につかまる場面でも、まさか、という雰囲気がすばらしい。実話をもとにしているようだが…。実際に薬物を運搬した老人が本作のような人生を送っていたかは定かではない。アールの憎たらしいまでに言いたいことを言う姿が良いのだろう。

強烈なインパクトがあるのは間違いない。



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