運び屋


 2019.5.5      クリントイーストウッドの嫌味な爺役は最高だ【運び屋】

                     
【映画ポスター】 運び屋 The Mule クリント・イーストウッド /アート インテリア
評価:3.5

■ヒトコト感想
90歳のアールが麻薬の運び屋となる。クリント・イーストウッドは相変わらず口の悪い爺の役がすばらしい。家族を蔑ろにし、仕事一辺倒だったアールが、家族の大切さに気付く。もしかしたら、クリント・イーストウッド自身のことを言っているのかもしれない。アールは麻薬の運び屋をしながら、家族の大切さに気付く。麻薬取締官も、90歳の老人が運び屋だとは思わないため、常に警察の網の目を潜り抜け、麻薬の運搬を成功させ続ける。

最初は険悪だった麻薬組織の面々といつの間にか仲良くなっていたりする。思ったことを素直に言うアール。現代人がスマホを手放せないことについての強烈な皮肉も込められている。終盤での全てを悟ったような表情はすばらしい。

■ストーリー
90歳になろうとするアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は金もなく、ないがしろにした家族からも見放され、孤独な日々を送っていた。ある日、男から「車の運転さえすれば金になる」と持ちかけられる。なんなく仕事をこなすが、その仕事、メキシコ犯罪組織によるドラッグの運び屋だった…

やがて、気ままな安全運転で大量のドラッグを運び出し、多額の報酬を得るが、麻薬取締局の捜査官(ブラッドリー・クーパー)の手が迫る……

■感想
仕事熱心で自分が周りから評価されることだけを考えていたアール。家族よりも自分優先。娘の結婚式すら不参加な男。信じられないような男だが、事業に失敗し何もかも失って初めて家族の大切さに気付く。ただ、そうなった時には誰も周りにはいない。

孫娘の結婚パーティに参加しても、家族から白い目で見られる。娘とは12年口をきいていない。まさに悲惨な晩年を絵にかいたようなパターンだ。そんなアールも家族のためにと金を稼ぐことを考える。そこで紹介されたのが…。

最初は麻薬を運んでいるとは知らず、ただ安全運転でモノを運んでいただけだった。それが中身を見てからも、大金が手に入ると知りそのまま仕事を続ける。90歳の老人が何百キロもの麻薬を運搬する。誰も老人が運び屋だとは思わないので、警察のマークも甘い。

アールが自由気ままに寄り道をしながら運搬するので、それすらも良い方向へと流れている。合間では、警察に見つかりそうになりながらも、アールは機転をきかせて警察から逃れている。アールの気ままな運び屋稼業が本作の見どころだろう。

麻薬組織の悪人たちともいつの間にか親しくなっているアール。気を遣うことが一切ない言葉を続けるアール。麻薬組織のボスの家では「この豪邸を作るのに何人殺した?」と聞いたりもする。ただ、その正直な物言いが周りを引き付けるようで、いつの間にか悪人たちの間でも仲間を作っている。

ただ、最後の仕事ではボスが変わったこともあり、厳しい状況となる。最後は家族かそれとも自分の命かという2択を迫られる。死を覚悟したアールの迫力はすさまじい。そして、アールを追いかけ続けた麻薬取締官との最後のやりとりも秀逸だ。

クリントイーストウッドの爺役はすばらしい。



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