ハゲタカ2.5 ハーディ 下 


 2018.7.9      脅しと暴力で権力を得る 【ハゲタカ2.5 ハーディ 下】

                     
ハゲタカ2.5 ハーディ(下) (講談社文庫) [ 真山 仁 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻では世界的リゾートグループの権力争いの最中に、貴子が巻き込まれる過程が描かれていた。上巻では鷲頭の名前はところどころに登場してきた。鷲頭がカギを握っているのは間違いなく、それが下巻ではっきりするのかと思いきや…。

下巻では、鷲頭は登場してこない。そればかりか、ハゲタカシリーズにしてはかなりきな臭い流れとなっている。中国共産党内部の権力争いに巻き込まれることになった貴子。そのため、関わった者たちが次々と死んで行ったりもする。リゾートグループを正規の買収で手に入れるのではなく、脅しや暴力で手に入れる。その結果、貴子だけが最終的に漁夫の利を得たような流れだ。やはり、本作はハゲタカシリーズの外伝的な扱いなのだろう。

■ストーリー
世界的リゾートグループのパリ本社で激しい権力闘争に巻き込まれる松平貴子。中国の富豪・将陽明と娘の美麗はあらゆる手を尽くして事態を混乱に陥れる。冷酷な買収者・鷲津の影もちらつき、中国内部の暗闘も表面化、物語はさらなる局面へ。ミカドホテルの運命は?「ハゲタカ」から生まれた国境サスペンス劇!

■感想
世界的なリゾートグループの取締役となった貴子。真の目的はミカドホテルを取り戻すことであったのだが…。世界的企業の幹部たちとの駆け引きや、パリと世界を往復しながらの仕事は過酷だ。貴子の状況はかなり特殊だが、ミカドホテルを取り戻すため必死になっている。

そこから貴子をサポートする中国の富豪・将が怪しい動きをする。中国の権力争いに巻き込まれる形となる貴子。今までのハゲタカシリーズと比べると、きな臭い流れが強い。権力争いの結末は人の死に行き着くことになる。

鷲頭は名前だけが登場してくる。そして、いつ鷲頭本人が動き出すのかと楽しみにしていると…。結局のところ鷲頭は登場してこない。貴子は漁夫の利を得る形でミカドホテルを手に入れることになる。その代わり貴子が直面する状況はすさまじいことになる。

将や美麗はかなり強烈だ。特に美麗は中国共産党の権力争いに対して自分の父親である将がどのような立ち居振る舞いをするのか。ある時は絶体絶命のピンチに陥るが、そこから父親が権力を行使すると、一気に反撃に繰り出す。恐ろしいまでの権力のシーソーゲームだ。

ハゲタカの外伝としての面白さはある。投資や巨額の資金を使っての買収という流れはない。ただ、中国の権力争いと、世界的なリゾートグループの行く末などが複雑に絡まってくる。金ですべてを牛耳ろうとするのがハゲタカシリーズだが、本作では暴力ですべてを牛耳ろうとする。

そこの争いに鷲頭が入り込むのは違和感があるので、本作には登場してこないのだろう。貴子がひとり得をした感じではあるが、その後の流れを考えると、貴子の状況は同情すべき部分がある。

ハゲタカシリーズの中では異質だ。



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