覆面作家 


 2021.10.28      作家をテーマとしたミステリー短編集 【覆面作家】

                     
覆面作家 [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
大沢在昌の短編集。作家が主人公の作品が多いため、まるで作者自身が主人公のような印象がある。ハードボイルド風味は少ない。殺し屋をテーマとした作品もあるのだが、どちらかというと不思議な展開となる短編が多い。印象的なのは「カモ」だ。ある作家が美しい女性に賭けをしようと持ち掛けれれる。その賭けの内容はSEXをして妊娠するかしないかだ。

作家の方にはまったくデメリットがない。なぜ女はこんな賭けを男に持ち掛けたのか。作家の血液型だけを聞く女。この血液型というのである程度内容は想像できたのだが、ラストの展開は良い。存在を消された者たちが集まる「村」も、いかにもこの世界の中に存在しそうで面白い作品だ。

■ストーリー
嘘と真実の狭間に潜む、謎を「私」はあぶりだす。収録作品すべての語り手は、著者を彷彿とさせる「私」なる作家。自身の経験に裏打ちされたミステリーは、本当にすべてフィクションなのか?ハードボイルド&ミステリーの第一人者が満を持して放つ珠玉の作品集「幽霊」ある日、作家の「私」に接触してきた真野と名乗る正体不明の男。彼が語る内容を小説にして欲しいと言うが。

「村」携帯が圏外になるほどの僻地に、思いもよらぬ人物が集う「村」の秘密。「確認」キャバクラの勤め終わりの女性を、家まで車で送り届けるドライバーは何を隠しているのか。など、どれもが読了後、虚実の有無をいやが応にも考えさせられるミステリアスな作品集。

■感想
全体的にミステリアスな短編が多い。表題作でもある「覆面作家」は、昨今の覆面作家ブームを描いている。まるで作者の感想をそのまま語るように始まる序盤。作者の実体験では?と思わせるような流れが良い。ある知り合いが死を間際に作家に作品を託す。

それは、作家の刑事シリーズの主人公を使った作品だった。知り合いの死後、その作品をどうしようかと考えた時、ある覆面作家が実はその知り合いの奥さんだと知る。本当にありえそうな展開が印象的だ。

「村」は本当にこの世にそんな村が存在するかも、と思わせる作品だ。ひっそりとした村には表からはわからないような店で元三ツ星レストランのシェフが腕を振るう店がある。急激に過疎が進み、つぶれた村のように思えたのだが…。

実は、世の中から存在を消している人々が暮らす村だった。この広い世界のどこかには、死んだり行方不明となっている人たちが住むような村はあるのかもしれない。食事に関しても至れり尽くせりであれば、立候補するシェフも多いことだろう。

「カモ」は衝撃的だ。男に都合の良い賭けを提案され、いぶかしる男。美しい女と一夜を共にすることができ、なおかつ妊娠したとしても男に責任はない。養育費も不要となる。そんな賭けにのぞんだ男なのだが…。男は賭けに負けたと言う。

結局は男のやり得だという流れなのだが、その後、おなかの大きな女と再会する。女の隣には有名な大富豪の老人がいた。実は男は妊娠するためにだけに選ばれていた。女が大富豪の子供を身ごもったと思わせるためだけに利用されていた。

ハードボイルドというよりはミステリーの要素が強い短編臭だ。



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