2018.8.5 アンデルセン童話のようではない 【江國香織童話集】
江國香織童話集 [ 江國香織 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
江國香織が描いた短編集。童話というタイトルがついているが、みながイメージするような童話とはなっていない。明確にどの作品とは言えないが収録されている短編は、どこか別の作品に収録されていたのだろう。「つめたいよるに」などで読んだことのある短編が収録されていた。子供視点の作品もあれば、大人のごく普通の短編作品もある。
童話というと、どうしてもアンデルセン童話のようなイメージがあり、何か教訓が含まれていると勝手に思っていた。童話集とタイトルはついているが、決して子供向けではない。大人でしかわからない趣や、大人だからこそ子供の視点に帰り感じることができる作品もある。子供が子供のまま読んだとしても、あまり感銘は受けないだろう。
■ストーリー
「草之丞の話」「デューク」「があこちゃん」etc.20代に溢れでた35作品。まっさらな子どもの視点から世界をみつめる童話集。
■感想
「草之丞の話」は印象深い。「つめたいよるに」に収録されていた作品で、なんとなくだが読み始めると思い出すことができた。父親が幽霊であり、母親は父親が大好きで息子も父親が大好きだ。親子関係の絆の強さや温かい気持ちが伝わってくる作品だ。
本作を子供が読むと、大人の世界をかすかに感じるかもしれない。童話となると挿絵が組み込まれるイメージだが、挿絵がなくとも十分楽しめる。たとえ父親が幽霊であったとしても、家族のあり方に変化はない。強烈なインパクトはないのだが、心に深く残る作品だ。
「デューク」もまた「つめたいよるに」に収録されていた作品だ。飼い犬に死なれてしまった女の子の話なのだが…。ラストが切ない。同じようにペットに死なれた経験をもつ人は、かなり心にくるかもしれない。SFの風味もあり、デュークの生まれ変わりという要素もある。
ありえないことなのかもしれないが、もしかして?と思う気持ちはある。デュークが生まれ変わり、悲しむ自分を慰めてくれたのかも?と前向きな気持ちで読み終わるべき作品なのかもしれない。
その他、雑多な短編が含まれている。そんな中で印象に残るのは、過去に別の作品で収録されていた短編だ。細かくどれというのは言えないが、読みだすと「どこかで読んだことがある」感を急に思い出すことができる。
再読したことで、記憶が刺激され思い出す程度で、普通に過ごしていて思い出すような作品ではない。なので、印象深いわけでもない。どれもがサラリと読める代わりに、頭の中からすぐに消えてしまう。お気に入りの作品があり、繰り返し読むなどすれば頭の中に残り、本作の代表的な短編という印象となるのだろう。
コアな江國香織ファンならば読むべきだろう。
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