どんまい 


 2019.6.3      それぞれ事情を抱えた草野球チーム 【どんまい】

                     
どんまい/重松清
評価:3
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■ヒトコト感想
夫と離婚し中学生の子供がいる主婦の洋子。昔の思い出を胸に、洋子は草野球のチームに参加しようとする。この草野球チームのメンバーには様々な癖のある人物たちがいる。みな何かしら問題を抱えている。甲子園経験者のキャッチャー。部活になじめない中学生。周りとなじめないおぼっちゃん選手。介護問題に悩むキャプテン。結婚できずに悩む独身者。

ごく普通の草野球チームに洋子とその娘である香織までもが参加しようとする。洋子の離婚した旦那とその再婚家族や、香織がどのような感覚でいるのかなど、非常に複雑な家族関係が描かれている。そんな中で最も感情移入できたのは、キャプテンの両親の介護問題だ。自分にも、もしかしたら悩む時期がくるかも、と思ってしまった。

■ストーリー
離婚届を提出する前日。夫との最後の話し合いを終え、自宅――ちぐさ台ニュータウンに娘の香織を連れて帰ってきた洋子。疲労感と将来への不安感でいっぱいだったが、団地の掲示板に〈メンバー募集 年齢・性別ともに不問〉という貼り紙があるのに気づく。ちぐさ台カープという草野球チームの入団募集だった。洋子は、子どもの頃、水島新司の野球マンガ『野球狂の詩』のヒロイン・水原勇気になりたかったことを思い出す。「入るから」。洋子は念を押すように香織に向かって繰り返す。

「お母さん、絶対に入るからね」。〈ちぐさ台団地の星〉と呼ばれたかつての甲子園球児、要介護の親を田舎に抱えるキャプテン、謎多き老人・カントク、そして娘の香織――草野球チームを通して交錯する「ふつうの人々」の人生を鮮やかに描ききった傑作長編小説。

■感想
離婚し娘と二人暮らしになった洋子が地元の草野球チームに参加する。中学生の娘がいるおばさんが草野球なんて、と誰もが思うことを本作でも描かれている。ちぐさ台カープという草野球チームは一癖も二癖もある者たちばかりだ。

中学の野球部でハブにされて、草野球チームに入ってきた中学生男子。香織と同級生であり野球はうまいのだが、先輩と折り合いがつかずに部活を辞めることになる。その他にも不動産会社のおぼっちゃまが草野球チームのエースであり、わがままで空気を読まない態度が周りからひんしゅくをかったりもする。

キャプテンの田村は広島に住む両親の介護問題を抱えている。年老いた両親の介護を優先するのか、それとも家族と東京で暮らすのか。みんなで広島に行くという選択肢はない状態で田村がどのような決断をするのか。このあたり、まさに自分にも当てはまることだと思った。両親のどちらかが介護が必要な状態になった時どうなるのか。親は施設にでも入ればよいというだろう。田村は、家族からは離婚もやむなしとまで言われている。ここまで強烈な状況というのは、自分に降りかかった時に対応できるかは不安だ。

洋子は別れた旦那が若い再婚相手との間に子供ができたと告白する。となるとそれは香織の腹違いの兄弟ということになる。このあたり非常に複雑だ。洋子のキャラクターの濃さと、おこりっぽいおばさんになっていると的確に指摘する香織。離婚後の複雑な人間関係というのは、読んでいて胃が痛くなる。

ただでさえ離婚というのはパワーを使う作業なのだが…。子供が大きくなってからの離婚というのは、それだけでかなりのインパクトがあるのだろう。

草野球チームの面々の特殊さが本作のポイントだろう。



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