2018.4.5 想像の斜め上をいくオチ 【ディレクターズ・カット】
ディレクターズ・カット [ 歌野晶午 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
SNSやTwitter全盛の時代のミステリー。youtubeの存在により、誰もが映像を発信することができる。そんな時代だからこそ巻き起こるミステリーなのだろう。テレビの番組制作ディレクターが、そこで特ダネを手に入れようとするあまり、自作自演を行う。それがひとつのきっかけにすぎず、結果としてとんでもない事件へと繋がる。
事件の当事者と思わしき人物は虐められっ子で陰鬱な人物だ。twitterで人知れず鬱憤をはらすようなタイプだ。連続殺人事件の犯人が、そんなある意味引きこもりの若者だったら、世間はどのような反応を示すのか。犯人からyoutubeやtwitterで反応がある。となると…。本作がすごいのは、最後に驚愕のオチを用意しているということだ。
■ストーリー
報道ワイド番組の人気コーナー「明日なき暴走」で紹介される、若者たちの繰り返す無軌道、無分別な行動が、じつは下請け制作会社の有能な突撃ディレクター仕込みのやらせだった。やらせディレクターはさらなる視聴率アップを狙い加速度的暴走を開始。
職務停止に追い込まれながらも、警察の裏をかいて連続殺人鬼とコンタントをとり、しかもそれを映像に収めたいディレクターの思惑どおり、殺人鬼は生中継の現場に現れるのか!?ラスト大大大どんでん返しの真実と、テレビ人間の業に、読者は慄然とし言葉を失う!
■感想
番組のいちコーナーだった「明日なき暴走」。そこでは、無軌道な若者たちの行動がメインだったが、ネタ切れのためついには自作自演をし始める。これだけならばディレクターの暴走で終わる。それが仕込みをきっかけとして、連続殺人事件へと発展していく。
無軌道な若者と友達がおらず職場でもいじめの対象とされる陰鬱な若者リンネ。傍若無人な若者に天誅を下すということで、リンネは若者たちに攻撃をくりかえす。そして、それをスクープしたディレクターは逃げ回るリンネを探し出そうとする。
SNSやtwitterで誰でも情報を発信できる社会では、逃亡中の犯罪者が情報発信してもおかしくはない。youtubeなどで犯罪の瞬間を映像としてUPしてもよい。そんな社会に衝撃を与えるような存在であるリンネを追いかけようとディレクターは若者を使い、あらゆる方策を練る。
その結果、あべこべに仲間がリンネに捕らえられ…。時代を反映した引きこもりの男の反抗という流れかと思っていたのだが…。ラストの流れが読者の想像を上回る展開となっている。さすが「葉桜の季節に君を想うということ」の作者だ。
ある一つのパターンを想像させ、ミステリアスな展開としている。そのパターンだけで十分ミステリアスで先がどうなるのか気になるため、さらにどんでん返しが待っているとはとても想像できなかった。そのため、終盤でタネが明かされた時には、とんでもない衝撃を受ける。
リンネが無軌道な若者に復讐する、ちょっと気持ちがすっきりする系の作品で、最後にはリンネはtwitterを使ったことが裏目にでて捕まってしまうのかと思ったのだが…。まったく想定外のオチだ。
衝撃的なオチであることは間違いない。
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