馬鹿と嘘と弓 


 2021.10.3      世の中の無差別殺人犯は本作の青年のような思考なのか 【馬鹿と嘘と弓】

                     
馬鹿と嘘と弓 / 森博嗣
評価:3.5
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■ヒトコト感想
森博嗣の作品。探偵がホームレスの青年の調査を開始する。この青年のキャラが作者独特のいつものキャラとなっている。論理的で合理的。世の中の空気を読むということがなく、正論を吐く。ただ、相手がどのような思いでいるのかまでは考えることができない。この手のタイプは作者の作品の主人公などでよく見る。

本作も、最初は調査対象者として存在したが、最終的には探偵の仲間になりシリーズとして続いていくのでは?と思ったのだが…。ラストは驚きの展開となる。何かを目的とするのではなく、ただ生きるだけ。仕事もせずホームレスで祖母の仕送りのみで生活していた男。探偵助手の女が男に多少の好意をいだきかけたのだが…。驚きの流れだ。

■ストーリー
探偵は匿名の依頼を受け、ホームレス青年の調査を開始した。対象は穏やかで理知的。危険のない人物と判断し、嵐の夜、街を彷徨う彼に声をかけた。その生い立ちや暮らしぶりを知るにつれ、何のために彼の調査を続けるのか、探偵は疑問に感じ始める。青年と面識のあった老ホームレスが、路上で倒れ、死亡した。彼は、1年半まえまで大学で教鞭を執っていた元教授で、遺品からは青年の写真が見つかった。それは依頼人から送られたのと同じものだった。

■感想
探偵の小川と助手のカヤベが登場してくる。ホームレスの青年を見守る依頼があり、青年を調査するのだが…。この青年が特殊だ。ホームレスとして生活し日々をただぼんやりと過ごしている男。合理的な考えをし世間に対してどこか厭世的でもある。

毎月1万の祖母からの仕送りで生活し、必要最低限のスローライフを送る男。カヤベが何かと話しかけても、必要最低限の会話しかしない。理知的であり、キャラとして作者が得意とする雰囲気なので、このまま新シリーズに突入するかと思いきや…。

青年と面識のあった老ホームレスが脳梗塞で死亡した。実はその老ホームレスは元大学の教授だった。この教授と依頼者と青年。3人にどのような関係があるのかを小川が調査する。そして、青年の生い立ちが明らかとなり、老ホームレスは父親の可能性があり、依頼者は祖父の可能性があるとわかった。

ここからは、青年目線でどのような生活を送ってきたかが描かれている。日々の食糧を手に入れるのも苦労する生活。他者に迷惑をかけたり、めんどくさいことを嫌がる性格というのがわかる。

物語のポイントとなるのは青年の祖母が死亡したことから変化していく。もう仕送りが送られてこないとわかると青年はある行動にでる。実は依頼者から新たな援助があるとほぼ決まっていたのだが、青年はそのことを知らずに強行にでる。

理知的で論理的な考え方のできる青年が選ぶ行動は強烈だ。刑務所に入れば安全に日々の食事にも困らず生活できる。何かをやりたいだとか、未来に希望のない者にとってはただ生きながらえるためだけには、刑務所がうってつけなのだろう。

世の中の無差別殺人犯も同じような思考なのかもしれない。



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