2018.10.21 アメリカ的なノスタルジー 【アトランティスのこころ 下】
アトランティスのこころ(下) 新潮文庫/スティーヴン・キング
評価:2
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■ヒトコト感想
上巻は子供時代のノスタルジックな気分になれる作品だった。そこから下巻では、学生時代のキャロルの物語や、ベトナム戦争に参加した物語などが描かれている。仲間の死やその後の変化などを受けて物語は最後にボビーとキャロルの再会で終わる。下巻と上巻のつながりというよりも、下巻の中で個別の物語が複数の短編の形で描かれているように感じた。
印象的なのは、戦争で負傷し盲目のふりをして、金を稼ぐ男の物語だ。警察に賄賂を渡しながら、乞食のように人々からのめぐみをうける。その後には、なにごともなく杖も使わず歩いたりもする。ぶつ切りにされた物語は、アメリカ人にとっては、何かしらノスタルジックな気分になるのだろう。
■ストーリー
1966年、ギャンブルと学生運動が吹き荒れる狂騒の大学時代が幕を開け、ピートはキャロルに出会う。1983年、変装を繰り返して出勤する謎の男がNYの路上に佇み、1999年、それらを知ることもなくひとりの男が渋滞中に変死する。それぞれの生が目に見えぬ糸を紡ぎながら、物語は解きほぐされ、感動のクライマックスへと向かっていく―残酷なまでに切なく、時間の刻印を呪う終幕へと。
■感想
上巻から子供時代のボビーとキャロルやサリーから、その後大人になった三人が描かれている。ギャンブルに熱中した学生時代の物語や、ベトナム戦争での物語。戦争から戻ってきたときの物語など、それぞれが独立した短編のように描かれている。
ハーツに熱中し勉強がおろそかになる。ちょっとした青春物語のような流れとなり、それなりにインパクトのある物語となっている。ボビーとキャロルの物語というよりも、そこからどのように周りの者たちがこの二人と絡んでいくかが描かれている。
サリーは戦争で負傷するが、それでもたくましく生きる。ボビーとキャロルとサリーそれぞれがどのような青春時代を過ごし、どのような大人になっていくのか。子供時代に交流のあった者たちが、成長し、どのような人生を送っていくのか。
それぞれの人生は順風満帆ではない。キャロルは死んだと思われる状態となる。皆がきらきらと輝くような少年少女時代から、現実を見て、それぞれ別々の道を歩む大人へと変わっていく。戦争が絡むことで、その変化はより激しいものとなっている。
ラストではボビーとキャロルがサリーの葬式で再会する流れとなっている。そこでは当然テッドの名前も登場してくる。本来ならばここで感動すべきだろう。ただ、ボビーやキャロルやサリーが経てきた人生というのが、アメリカ人でなければそこまで深くは共感できない可能性がある。
ベトナム戦争やハーツなど、日本人にはあまりなじみがなく、ノスタルジックな気持ちにはそこまでなれない。そのため、最後の再会の場面にしても、それほど大きな感動を得ることもない。
アメリカ文化にどっぷりとはまり込んでいれば、感動できるだろう。
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