あなたが消えた夜に 


 2019.7.14      犯人のサイコパス具合がすさまじい 【あなたが消えた夜に】

                     
あなたが消えた夜に 中村文則/著
評価:2.5
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■ヒトコト感想
連続通り魔殺人事件が発生した。物語は所轄の刑事である中島目線のパートと、後半では謎の解明につながる犯人目線でのパートがある。犯人はコートの男というキーワードで物語がすすんでいく。特別ミステリアスな雰囲気はないのだが、刑事の中島と相棒である女刑事の小橋が普通ではない個性を示しているために、妙な面白さがある。

名探偵ではないが、なぜか偶然犯人に繋がる情報を得ている中島と小橋。所轄の刑事として犯人逮捕よりも、これ以上犠牲者を増やさないために捜査する二人。捜査一課の上層部たちは責任回避に躍起になり、凝り固まった考え方を変えることはない。所轄と本庁の対立あり、犯人の異常さと男女の運命の絡まり合いがあるのは間違いない。

■ストーリー
連続通り魔殺人事件の容疑者“コートの男"を追う所轄の刑事・中島と捜査一課の女刑事・小橋。しかし、事件はさらなる悲劇の序章に過ぎなかった。“コートの男"とは何者か。誰が、何のために事件を起こすのか。男女の運命が絡まり合い、やがて事件は思わぬ方向へと加速していく。闇と光が交錯する中、物語の果てにあるものとは。

■感想
事件は一見なんの繋がりがないような事件だが、不可解な通り魔殺人事件が連続する。そして、その事件の犯人はそれぞれ別々の犯人が捕まることになる。コートの男が犯人と思われていたが、現実にはコートの男は存在していない。

中島と小橋が独特な捜査を続け、捜査一課の捜査方針から外れた捜査を続ける。ふたりの捜査方針は、犯人を強引に当てはめ見つけ出すことではなく、これ以上犠牲者を出さないために、真の犯人を見つけだそうとする。中盤では明らかに犯人に対するサイコパス的な印象がある。

連続殺人事件が暗礁に乗り上げると、捜査一課の上層部は責任回避のための動きをする。ある意味これは捜査のアリバイ作りなのかもしれない。中島たちが停滞する捜査に突破口を見出したとしても、全体の方針をその方向に傾けることは難しい。

誰が責任をとるのか。所轄に手柄を取らせることもできない。かといって、所轄の意見を無視して、後で責任を問われたくない。人間のあさましい部分がしっかりと描かれている。それらお偉いさんたちの動きとは別に、中島たちは独自の捜査を続ける。

後半からは犯人目線のパートが続く。ある意味、謎解きパートなのだが、意外な犯人であることは間違いない。男女の絡みからの事件。登場人物たちの中でまともな者は誰ひとりいない。サイコパスが続くと、それが普通になってくる。犯人がはっきりした後に、後日談的な何かがあるわけではない。

ただ、どのような動機で事件が発生し、なぜ連続通り魔殺人事件と思われたのかはわかる。その後、捜査一課や中島たちがどのようになったのかは描かれていない。

犯人たちのサイコパス具合はすさまじい。



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