雨の狩人 上 


 2019.6.28      感情が欠如した殺し屋が暗躍する 【雨の狩人 上】

                     
雨の狩人(上) (幻冬舎文庫) [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
狩人シリーズ。今回も佐江が新宿で暴れまわる。捜査一課の谷神と組んで不動産会社の社長が射殺された事件を捜査する。今回は暴力団と、暴対法が整備されたため、カタギとして暴力団以上にその悪質さを隠す組織との対決が待っている。日本最大の暴力団組織・高河連合には、新たに強力な殺し屋を隠しもつ男が勢力を拡大していく。

佐江は感情を失った殺し屋にたどり着くことができるのか。佐江周りだけでなく、殺し屋周辺の物語も丁寧に描かれている。殺し屋としての実力はずば抜けているが、人間的な感情が欠如している男。娘が登場していることから、下巻では殺し屋と娘の関係が深く描かれることだろう。佐江が事件の真相に近づきつつあることから、佐江が殺し屋に狙われることで上巻は終わっている。

■ストーリー
新宿のキャバクラで、不動産会社の社長が射殺された。捜査本部に駆り出された新宿署の佐江が組まされたのは、警視庁捜査一課の谷神。短髪を七三に分け、どこか人を寄せつけない雰囲気をもつ細身の谷神との捜査は、やがて事件の背後に日本最大の暴力団・高河連合が潜むことを突き止める。高河連合の狙いとは何か?人気シリーズ、待望の第四弾!

■感想
狩人シリーズとして佐江が事件を調査する。佐江の特徴として、暴力団に対して脅しは当たり前でありながら、暴力団とずぶずぶになることはない。線引きがしっかりしており、足を踏み入れない領域がある。

佐江が捜査をすすめる中で、相手を脅すのは日常茶飯事だ。刑事が店にくることを嫌がる者たちには、頻繁に来てやると脅す。その結果、重要な情報を手に入れることができるのだが…。佐江は捜査一課の谷神と合同で捜査することで、佐江の異質さがより強調される流れとなっている。

佐江は相手を脅して手に入れた情報を、他の重要な情報を手に入れるための材料としている。そんな中で、佐江は廃業した元暴力団組長に、廃業のきっかけとなった男の居場所を教えてしまう。

元組長は毒気が抜けて腑抜けのようになっているから伝えても問題ないと判断した。ところが、元組長は相手を殺害し自らも自殺した。相手のことが見抜けない佐江について、捜査一課の谷神は特に叱責することもなく、逆に隠して捜査をすすめるようにとアドバイスする。

物語としては殺し屋と佐江、そして捜査一課の谷神が何か大きなカギを握っているのだろう。谷神に何か裏があるのは間違いない。捜査一課の中で、はみ出し者扱いされている存在。同じく警察組織からはみ出し者扱いされてはいるが、その能力と暴力団ネットワークが事件解決に必要だと飼い殺しされている佐江。

下巻では殺し屋との直接対決もあるのだろう。暴力団組織の狙いが何かもまだ判明していない。下巻ではそれらすべてが判明し、谷神の目的も判明するのだろう。

下巻での流れがどうなるのか、気になるところだ。



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