R帝国 


 2020.4.27      今の日本の姿を描いている 【R帝国】

                     
R帝国 /中村文則
評価:4
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■ヒトコト感想
近未来の架空の国ということになっているが、そのまんま今の日本に当てはまるような衝撃的な作品だ。作中では党に支配されている者たちが、党に反抗しつつ党が独占支配する国の現状を憂いている。ただ、衝撃的なのは、戦争やテロなどはすべて誰かが都合のよいように操作しているという部分だ。

あらゆる出来事は裏で誰かの都合のよいように動いている。それらを知らずに党の都合のよいようにマスコミを操作し世論を動かす。ただ、今の暮らしに慣れた国民たちは、都合の悪いことは見ないようにする。謎の組織「L」たちが党の妨害から逃れながら、党が戦争を起こしている証拠を国民に知らしめたとしても。。。今の生活を捨てられない国民は見て見ぬふりをする。

■ストーリー
舞台は近未来の島国・R帝国。ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。だが、何かがおかしい。国家を支配する絶対的な存在″党″と、謎の組織「L」。やがて世界は、思わぬ方向へと暴走していく――。世界の真実を炙り出す驚愕の物語。

■感想
近未来の架空のR帝国の物語となっているが、そのまんま今の日本に当てはまるような物語だ。国内でテロや他国からの領土の侵略がある。最初はそれに甘んじていたが、国民の怒りが増幅し、他国と戦争することに誰も反対しない。

これはまさに今の中国や韓国に対する日本の状況に近いだろう。国民の感情を操作し、戦争へとつきすすもうとする。それらはすべて党を牛耳っている者たちが望む方向となる。一部の真実を知る組織はLを中心として国民に党の不正を明らかにさせようとするのだが…。

党の支配体制はすさまじい。ネット上を支配しマスコミも支配する。党に逆らう者がいる場合は、人知れず処理させる。能力があるが党に対して反抗的な者は、記憶を消しそれまでの思想をリセットし党のために働くようにマインドコントロールする。

党の支配者さえも、過去に記憶を消された上で、現在の地位を得ている。とんでもない世界だ。末端の国民は何も知らされていない。ただ党が考えるようにテロに怒り、戦争への機運を高めている。すべてがコントロールされ、不満すらも適度にコントロールされる世界だ。

衝撃的なのは、国民たちがすすんで真実から目を背ける場面だ。自分たちの今の生活があるのは、弱小国から搾取しているからだ。国民は口ではきれいごとを述べているが、自分たちの生活が弱者の存在により成り立っているのを知らないふりをする。悪者は党や政府として、自分たちは清廉潔白でいたい。

汚れ仕事は政府がやるべきと考えている。まさに今の日本の状況そのままだ。たとえ党の不正が明らかになったとしても、今の暮らしを維持したい国民は「そんなはずはない」「デマだ」と見て見ぬふりをする。

これほど衝撃的な作品を久しぶりに読んだ。



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