夢の島  


 2017.1.18      知らずに巨大利権を受け継ぐ男 【夢の島】

                     
評価:3
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■ヒトコト感想
フリーのカメラマンである信一に、24年ぶりに父親からの手紙がくる。父親の死とその遺品により信一の周りがさわがしくなる。序盤では何も知らない信一に対して、周りの者たちが次々と信一と父親の間で取り交わされた秘密を探ろうとする。信一が状況を理解していくのと同時に、読者にも内容が明らかとなる。ヤクザや実業家、そして父親の知り合いまで。

何か巨大な利権の秘密を持つと思われる信一に対して、様々な者たちが接触してくる。最終的には夢の島の存在が明らかとなり、そこには大麻に関する巨大な利権が隠されていた。信一の妙な使命感と、父親との関係など、複雑な物語として最後まで気が抜けない展開となっている。主人公が知らないうちに周りの者たちが秘かに利権を狙っている部分が恐ろしい物語だ。

■ストーリー
1枚の絵に隠された亡き父の想いとは、2歳で別れてから24年。音信不通だった父が亡くなった。その知らせを受けて以来、駆け出しのフリーカメラマン・絹田信一の身辺は急に騒がしくなる。唯一遺品として受け取った、父が描いた絵。それをめぐり、不穏な動きを見せる人間たち。恋人、友人も様々な事件に巻き込まれ、信一は絵に秘められた謎に挑む。

■感想
信一は24年間音信不通であった父親の遺品として1枚の絵を貰う。そこから信一の父親が抱えていた秘密と利権を目指して有象無象が信一に近づいてくる。信一本人が何も知らない状態で周りが近づいてくる。次第に周囲の変化に気づき、奇妙さを意識しだす場面が本作の面白さの肝だ。

信一の周りに近づいてくる者たちは、誰が味方で誰が敵なのかわからない。父親が残した利権を狙ってのことなのか、それとも偶然に出会っただけなのか。味方と思っていた者が実は裏でさまざまな策略を張り巡らせていたというは衝撃的だ。

信一が夢の島の存在に気づき、そこから父親が残した利権が明らかとなる。そして、利権を狙う者たちとの対決がスタートする。利権を手に入れるために信一へと取引をもちかける者もいる。1千万だとか、1億の金額を提示したりもする。

金が必要なはずの信一が、なぜか妙な責任感から利権をつぶそうとする。このあたり、信一の心境がよくわからない。顔も知らない父親が残した利権。仮に多くの人を不幸にする利権だとしても、1億と引き換えに平穏な生活に戻れるのならよいのでは?と思ってしまった。

夢の島内部での激しい攻防の中で、衝撃的な真実が明らかとなる。今まで信一が父親と思っていた男が実は違っていた。無人島で繰り広げられる激しい利権争い。ハードボイルドとも違う、冒険物語とも違う。本人にその意志がないまま、周りに巻き込まれる形で危険に足を踏み入れざるお得ない。

強烈なインパクトはないのだが、信一の周りで巻き起こる出来事は、奇妙な恐ろしさがある。自分が心当たりがない状態で周りが積極的に自分に関わってくる。何が目的かわかるまでは、ページをめくる手を止めることができない。

強烈なインパクトはないのだが、冒険モノとしての面白さがある。



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