四畳半王国見聞録 森見登美彦


 2015.6.10      超個性的なキャラクターたち 【四畳半王国見聞録】

                     
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■ヒトコト感想

四畳半神話大系」に続く物語なのだろうか。大学生の後悔の物語であった前作。ひたすら似たようなことをループするという奇妙な面白さはあった。本作もその流れかというと…。今回は純粋に四畳半で生活する怪しげな男たちの物語だ。さらに言うなら、怪しいのレベルが普通ではない。数学が命の男は、数式を導いた結果、自分に恋人がいたことを証明したりもする。

さっぱり意味がわからない。俗に言うオタクとも違うある種の異常な人物だ。物語の世界でなければ、間違いなく通報されるレベルだ。それ以外にも水玉ブリーフの男やモザイク先輩など、個性的すぎる異常者たちが登場する。正直、よくわからない部分も大きい。この突き放した感が良いのかもしれない。

■ストーリー

「ついに証明した!俺にはやはり恋人がいた!」。二年間の悪戦苦闘の末、数学氏はそう叫んだ。果たして、運命の女性の実在を数式で導き出せるのか(「大日本凡人會」)。水玉ブリーフの男、モザイク先輩、凹氏、マンドリン辻説法、見渡すかぎり阿呆ばっかり。そして、クリスマスイブ、鴨川で奇跡が起きる―。森見登美彦の真骨頂、京都を舞台に描く、笑いと妄想の連作短編集。

■感想
四畳半で生活する男たちの物語。数学の才能があり、数式を説くことについてはずば抜けた能力を持つ数学氏。ついには自分に恋人がいたことを数式で証明してしまう。意味がわからない。そして、そう言われた女性からすると、気持ち悪い以外の何物でもない。

数式で自分が勝手に恋人にされる。想像するだけでも恐ろしい。四畳半にひたすら籠り、数式を年がら年中解き続ける。この異常具合が、作者の文体で描かれると、そこまでインパクトのある流れではないのが驚きだ。慣れてしまうのかもしれない。

数学氏以外にも個性的な面々が登場する。水玉ブリーフの男もそのひとりだ。いい年をした男が水玉ブリーフだけをつけて公衆の面前で踊るなんてことがありえるのだろうか。即座に警察へ連行されるのが普通なのだが…。

モザイク先輩にしても、エロDVDのモザイクを解除する能力という、実用的なのかどうなのかわからない力を持つ。男たちには大人気だろうが、どういう原理なのかまったくわからない。マンドリンで占いをする男や、自分が座った場所の形を変える凹氏など、まったく世の中の役に立たない能力を持つ者ばかりだ。

四畳半で生活し、特別な能力はあるが、世間の役に立たないようにする。というか、役に立てようとしても役立たないような気もするが…。当然、女性にもてるはずのない男たちの、世間に対する逆恨みなのか、それとも改革なのか。

作者の非モテ系作品は、なんとも言えない突き抜けた感じが良い。他者におもねることなく、わが道をひたすら行く。恐らく、世間的な評判などあまり気にしないのだろう。この突っ走る感じが逆に面白く感じるというのもある。

登場キャラクターだけは、間違いなくインパクト抜群だ。



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