闇先案内人 下 大沢在昌


 2016.9.9      キャラ立ちした逃がし屋たち 【闇先案内人 下】

                     

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■ヒトコト感想
成滝が逃がそうとする男には秘密があった。上巻では「逃がし屋」の仕事ぶりと、警察幹部に脅され葛原はやむなく協力するという図式だった。それが、ことの真相が見えてくると、葛原はすすんで動き出す。成滝が逃がす対象である林の存在が、工作員やヤクザ、公安までも巻き込む騒ぎとなる。葛原は、いつの間にか命を賭けて林を探し出そうとする。

最初は見つけ出すことに主眼を置かれていたが、いつのまにか逃がす方向へと動き出す。物事が目まぐるしく移り変わり、誰が味方で誰が敵かわからなくなる可能性がある。そして、在団特務の影の主である金の存在が不気味だ。葛原がスパイのふりをしてもぐりこんだは良いのだが…。逃がし屋としての葛原の目的が大きくかわる瞬間だ。

■ストーリー

忽然と消えた「客」の背後にはもう一人の「逃がし屋」の影が…。跡を追って東京に戻った葛原を迎えたのは、工作員、在団特務、ヤクザ、公安が入り乱れる「戦争」だった。誰が裏切り者で、誰が囮なのか?殺し合いに大義はあるのか?権力をめぐる謀略と死闘が渦巻く中で、はたして「客」は逃げ切れるのか―。

■感想
国の威信をかけて戦う者たち。林をめぐる様々な組織の攻防の中で、愛国心で動く者たちがいる。これらの者たちは非常にやっかいだ。目的を達成するためには手段を選ばず、捕まろうものなら、あっさりと自害してしまう。そんな組織と対決することになった葛原たち。

当然のごとく激しい銃撃戦もある。となると、葛原たちを守る存在であった警察組織にも犠牲者がではじめる。誰が敵で誰が味方かわからない中、メンツを大事にするのか、愛国心に重きをおくのか。

重要な情報源である姜の存在がカギとなる。在団特務を牛耳る金は姜を捕え、拷問することで林の居場所を探ろうとする。そこでの激しい拷問が、のちに金の首を絞めることになる。激しい恨みは愛国心をも凌駕するのかもしれない。

葛原が命を賭けてスパイと信じ込ませることで、金たちへダメージを与えることに成功する。騙し騙されの世界だということはわかるが、そこまで大胆に騙すのか?と思えるほど葛原の行動には強烈なインパクトがある。正体がばれたその瞬間に殺されるとしても、平常心で相手を騙し続けるすさまじい胆力だ。

主人公であり「逃がし屋」である葛原が、武闘派であったり、特別な能力をもつわけではないのがよい。相手のことを分析し、どのような行動をとるか予測する。そして、極め付けはその演技により相手をだます。逃がし屋としての不気味さは成滝の方が強い。

正体を決して見せることなく、囮を多数用意しながらひたすら逃げ続ける。そんな不気味な恐怖心は屑原にはないが、人を惹きつけるカリスマ性はある。逃がし屋としての仕事というよりも、どこか探偵のようにすら思えてくる。

シリーズ化しても良いのでは?と思うほどキャラ立ちしている。



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