野蛮人のテーブルマナー 佐藤優


 2015.10.31      スパイとしての活動のマナー 【野蛮人のテーブルマナー】

                     
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■ヒトコト感想

タイトルにあるテーブルマナーをそのまま文字通り受け取るべきではない。インテリジェンスの世界での振る舞いをテーブルマナーとして説明している。作者の他作品を読んでいる人ならば、内容はある程度重複している部分がある。外務省の職員として働いてきた作者の諜報活動での振る舞い。いわばスパイとしての活動のマナーが描かれている。

重要な情報を集めるためには、相手におごる食事の値段についてもあれこれ書かれている。さらには、実際にニュースにもなった事件についていくつか解説されている。相手が毒を使う意味や、やりすぎた場合に相手からでるシグナルを見逃さないなど、その筋の世界に生きている人のシビアな現実が描かれている。

■ストーリー

インテリジェンスとは、生情報に評価や分析を加え、国家の政策の遂行に活用すべく、知的操作を加えた情報を指す。それは、基本的には国家の機能だが、その技法は企業や個人にも応用できる。ビジネスパーソンがインテリジェンスの技法を身につけていれば、情報収集や人脈構築のみならず、いい女をものにする場合にも、この技法でライバルを出し抜くことができる。諜報機関が駆使するテーブルマナー、すなわち「掟」を、トッププレイヤーが伝授!

■感想
佐藤優の作品をまったく読んだことがない人にとっては、非常に興味深い作品となるだろう。外務省で諜報活動に従事してきた作者の経験が赤裸々に語られている。ただ、すでに他作品をいくつか読んだことがある人にとっては、何度も読んだことがある内容となっている。

唯一新しい部分としては、現実に起こった事件を作者な入りに解説している部分だろうか。中国の日本大使館に勤務していた電信官が自殺したことに触れている。結局はハニートラップに掛かったということらしいが、それを外務省が未然に防ぐべきというのが作者の意見だ。

インテリジェンスの世界でのマナーは絶対に守るべきだと作者は言う。それをやぶる国(中国など)は他国から信用されなくなるらしい。実際にソ連での出来事を通して作者は自分が過去、どのようなことをやりすぎて、どんなシグナルがでたのか。

それに気づかなかった結果どうなったのか。非常に恐ろしい世界だと感じずにはいられない。一歩間違えれば死ぬ世界。それが国と国との情報戦の真っただ中にいる人物なのだろう。すでに定番と化しているが、鈴木宗男との対談があるのはいつものことだ。

インテリジェンスの世界の怖さと、現代のスパイ活動がどんなものかがよくわかる。それと共に、作者が他の文化人と対談しているのだが、そこではいつもどおりの作者の主張を聞くことができる。作者は情報戦だけでなく、女をものにする場合や、出世するにも必要な技法だと言う。

が、なかなかそこまで考えて実行にうつす人も少ないだろう。インテリジェンスの世界の根底にあるのは、なによりも大切なものがはっきりと明確化されているからできることで、現実のしがないサラリーマンがここまでできるかというと…、厳しいだろう。

実用性はないかもしれないが、興味深く読むことができる。



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