脇坂副署長の長い一日  


 2017.5.25      警察は一般人以上に不祥事に敏感 【脇坂副署長の長い一日】

                     
脇坂副署長の長い一日 [ 真保 裕一 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
副署長の脇坂のとんでもなくゴタゴタが続く1日を描いた作品。息子と妻の行方が知れないという娘からの電話で始まる。病欠していた部下が事故を起こし、現場から逃走したという情報が入る。なんでもない日常ならばマスコミに隠し通せるが、今日はアイドルが一日署長としてやってくる日のため右往左往する。副署長が自ら進んでいろいろな人に話を聞き捜査をすすめていく。

最初はそれぞれ別の出来事かと思われた事件が、実は最後にひとつに繋がる。中盤まではオチが想像できず強い興味を惹かれる展開だった。それが政治家が登場し、派閥争いの話となると、なんだか事件としての魅力が薄れたような気がした。それにしても刑事は家族関係を維持することすら難しいほど忙しい職業だとは思わなかった。

■ストーリー
それは地元出身のアイドル・キリモエが一日署長を務めるというイベント当日。賀江出署副署長の脇坂に思いも寄らぬ報告が上がった。病欠していた若い巡査部長・鈴本が、事故現場から逃走した……?ただでさえマスコミの注目が集まる大事な一日。

そんな日に、あってはならぬ身内の不祥事か、それとも……?収拾を一任された脇坂だが、捜査を進める内に、誰も予想し得ない事態に次々と直面する。一方で、脇坂自身の家庭内でも、前夜から妻と息子の双方に不可解な行動があり、それに気付いた娘・由希子から想定外の連絡が続いていた。

■感想
運の悪いことに地元出身のアイドルが一日署長イベントを行う時に、さまざまな問題が発生する。賀江出署の副署長である脇坂が事件解決に奔走する物語だ。まず印象として強く残っているのは、警察というだけで一般人以上に不祥事に敏感となることだ。

原付バイクの事故を放置したことについて、一般人であればそこまで大げさなことにはならないが、警察官であれば不祥事となる。家族が少しでも警察のやっかいになれば、それだけで刑事である義理の兄弟に対して迷惑をかけることになる。なんだかとてつもなく身ぎれいで聖人しか勤め上げられない職業に思えてしまう。

警察内部での派閥争いにより、事件に対して歪んだ捜査が行われる。脇坂は家族の問題に始まり、部下が事故現場から逃走したこと。そして、一日署長のアイドルに薬物疑惑が浮かび上がり、最後には9年前の事件がすべてに関係する流れが浮かび上がる。

中盤までは、個別の事件についての謎が深まり、先が気になって仕方がない展開だ。それが後半になるにつれ、それぞれの事件の登場人物が別の事件の関係者として登場してくる。確かに繋がりの面白さはあるのだが…。

事件が複雑化し、脇坂を騙していた部下や家族に対しての脇坂の怒りは、事件解決のためにはやむを得ないという論調になっている。序盤で事件を起こした部下は、将来はないとすら言及していたのだが…。

複雑すぎるオチが、警察内部の派閥争いであり、事件単体ではそれほど大きなインパクトがないのが、尻すぼみに感じる原因だろう。もっと壮大な裏があるかと思っていた。警察官のとんでもない忙しさが強烈に描かれており、家族の覚悟というのもしっかりと描かれている。

警察官のしきたりというか、非常に周りを神経質にさせる職業だというのがよくわかった。



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