有頂天家族 二代目の帰朝 森見登美彦


 2016.1.10      成長した下鴨家の狸たち 【有頂天家族 二代目の帰朝】

                     
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■ヒトコト感想

前作同様に狸社会の物語となっている。今回は狸たちがひれ伏す存在である天狗の赤玉先生の跡継ぎである二代目がイギリスから帰ってきたことによる騒動が描かれている。下鴨家の三男である矢三郎も成長し、バカなことをする子狸から、良識のある大人狸へと成長している。相変わらず狸鍋を食す「金曜倶楽部」や、赤玉先生あこがれの天狗である弁天。

そして、下鴨家の永遠のライバルである夷川家の面々が登場し、騒動を巻き起こしている。二代目と赤玉先生の親子げんかが勃発するかと思いきや、狸界を混迷させる様々な出来事が起こる。狸鍋というのがすべてにおいてポイントなのだろう。ちょっとした狸同士の恋愛模様あり。あきらかに前作よりパワーアップした狸たちだ。

■ストーリー

狸の名門下鴨家の三男・矢三郎は、親譲りの無鉄砲で子狸の頃から顰蹙ばかり買っている。「面白きことは良きことなり」という父の教えを胸に、誰もが恐れる天狗や人間にちょっかいを出しては、愉快に過ごしていた。そんなある日、老いぼれ天狗・赤玉先生の跡継ぎである“二代目”が英国より帰朝。狸界は大混迷し、平和な街の気配が一変する。

しかも、人間の悪食集団「金曜倶楽部」は、恒例の狸鍋の具を懲りずに探している…。阿呆の誇りを賭けて、尊敬すべき師を、愛する者たちを、毛深き命を守れ!待ちに待った毛玉物語、再び。愛おしさと切なさで落涙必至の感動巨編。

■感想
京都で巻き起こる狸と天狗の物語。前作から引き続き主人公は下鴨家の三男である矢三郎だ。毛だらけの狸という描写はあるが、ときおり人に化けたりもする。物語を読んでいくと、矢三郎たちが狸であるということを忘れてしまう。

頭の中では普通に、京都に住むちょっとした若者のようにすら思えてくる。強烈な力を持つ天狗におびえ、金曜倶楽部という狸鍋を喰らう集団におびえながら、日々生活する矢三郎。そこでは兄弟の恋愛話や、矢三郎自身の許嫁の話など、狸ということを忘れてしまう流れであることは間違いない。

突如帰ってきた二代目と赤玉先生の親子げんかがポイントだろう。赤玉先生の跡を継ぐのは二代目かそれとも弟子である弁天か。狸界にも大きな影響のある天狗の跡取り問題。矢三郎たちがどちらを支持するというのはない。

ただ、弁天に翻弄され、スカした態度を取りながらとてつもない能力を隠し持つ二代目の存在は大きな騒動の種であることは間違いない。下鴨家の三男として矢三郎が怪しく動き回る。常に天狗の腰ぎんちゃくのような存在であり、金曜倶楽部にも潜り込んだりと、主人公らしいアグレッシブな動きを見せている。

本作には矢三郎の父親が狸鍋にされて金曜倶楽部の面々に食べられたというのがある。擬人化されてはいるが、狸ということを思い起こさせる流れだ。いきなり残酷な狸鍋だが、物語の中では常にポイントとなる。

ライバルの夷川家の当主が空気銃にて殺されてしまい、その後、夷川家長男である呉一郎が登場してくる。ところどころにギャグが織り交ぜられてはいるが、シリアスな場面もある。そして、後半からは呉一郎の偽物が登場し、まさかのミステリアスな展開となる。

狸が主人公ということを忘れてしまう勢いがある。



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