有頂天家族  


 2011.5.20  わかる人だけ笑えばいい 【有頂天家族】

                      評価:3
森見登美彦ランキング

■ヒトコト感想

狸と天狗と人間が京都の町でくりひろげる不思議な出来事。作者の得意分野である、「もてない大学生の妄想」というのが、狸になっただけかと思いきや、狸独特の面白さというのが表現されている。狸は化ける。天狗は強力な術を使い、人間は狸なべを食う。三すくみの関係のように思えるが、実は狸にふりかかる様々な苦悩を面白おかしく描いている。狸でありながら、化けるということがなければ、ただの腐れ大学生と変わりない。狸どうしの権力争いや、天狗のごきげんとりなど、狸であってもうだつの上がらない人間とまったく変わりない。毛むくじゃらの狸が、面白い行動をとる。その絵を想像し、ニヤリとする。そんなことの繰り返しが、本作を読んでいると思いうかぶかもしれない。

■ストーリー

「面白きことは良きことなり!」が口癖の矢三郎は、狸の名門・下鴨家の三男。宿敵・夷川家が幅を利かせる京都の街を、一族の誇りをかけて、兄弟たちと駆け廻る。が、家族はみんなへなちょこで、ライバル狸は底意地悪く、矢三郎が慕う天狗は落ちぶれて人間の美女にうつつをぬかす。世紀の大騒動を、ふわふわの愛で包む、傑作・毛玉ファンタジー。

■感想
狸が主人公のちょっと変わった物語。狸ではあるが、かぎりなく「京都の腐れ大学生」にちかい。ただ、化けるということと、狸なべにされる恐怖ということ以外は、ほとんど人間とかわらない。弁天という小憎らしい人間が登場し、赤玉先生という天狗をその色香でまどわす。あいまに登場する、ちょっとした小ネタがいちいち面白い。赤玉ポートワイン好きの天狗というのも面白ければ、意味もなく四字熟語が好きな狸も面白い。独特な文体と、わかる人だけが笑えば良いという、突き抜けたギャグ。好きな人にはたまらないだろう。

物語は、狸界を牛耳っていた父親が狸なべにされて死ぬということがポイントとして描かれている。ショッキングな出来事のはずなのに、本作の中では悲壮感がない。どこかギャグ的な要素があるように思えてしまうから不思議だ。ライバル狸との戦いであっても、どんなに相手のことを憎んでいても、そこには真剣な怒りというのはない。狸だからというフィルターがあるとしても、コミカルな行動と、ちょっとしたユーモアの数々。主人公が狸なべになるかもというタブーに対しても、どこか悟りをひらいたように、受け入れてしまう度量が本作全体にあるような気がした。

本作は狸の形をかりた、家族愛の物語だ。長男はくそマジメ、次男は井戸で蛙となり、三男は好き勝手なことをするアホ(主人公)、四男は小心者。それら兄弟が母親と手をとり合って狸界で生きていくという、ちょっと間違えれば、感動作とも思える流れになっている。わがまま放題のダメ天狗である赤玉先生や、自由奔放な弁天など家族の絆を確かめる要素があり、どんな苦難に陥ろうとも、小粋なギャグとフモフモとした毛玉でしかない狸の根性と、家族の絆でのり越えている。

作者独特の文体が、狸の雰囲気を面白おかしくしている。




おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp