嘘実妖怪百物語 序  


 2017.3.21      現実世界に妖怪が現れるとどうなるか 【嘘実妖怪百物語 序】

                     

評価:3
京極夏彦おすすめランキング
■ヒトコト感想
実在する人物を扱った、ちょっと変わった妖怪小説だ。京極堂シリーズとは明らかにトーンが異なり、ギャグの部分に力が入れられている。登場人物たちは、妖怪専門誌『怪』の編集に関わる者や京極夏彦本人、荒俣宏、水木しげるなどが登場してくる。うちわネタ的な部分があり、それほど笑えないネタもある。現実世界に妖怪が登場したらどうなるのかを描いている。

妖怪専門誌の編集者でさえ妖怪を目にした瞬間は、自分の目を疑わざるおえない。新幹線が立ち往生した原因は朧車があらわれたから。京極堂シリーズのようなシリアス感はない。ただ、現代に妖怪が登場した時にどのようなことになるのか。今後の展開が気になってしかたがない。

■ストーリー
シリアの砂漠に現れた男。旧日本兵らしき軍服に、五芒星が染め付けられた白手袋。その男は、古今東西の呪術と魔術を極めた魔人・加藤保憲に、よく似ているように見えた――。妖怪専門誌『怪』の編集長と共に水木プロを訪れたアルバイトの榎木津平太郎は、水木しげる氏の叫びを聞いた。「妖怪や目に見えないモノが、ニッポンから消えている!」と。だがその言葉とは逆に、日本中に次々と妖怪が現れ始める。錯綜する虚構と現実。物語が迎える驚愕の結末とは――。

■感想
妖怪専門誌の編集者たちが主人公となり短編が描かれている。それぞれが妖怪の話をするのだが、店の外のガラスに貼りつくしょうけらや、一つ目小僧など現実世界に妖怪があらわれたらどうなるのかを編集者を使って面白おかしく描いている。

かなり濃いキャラクターをもつ編集者たちで、その個性が面白さを生み出している。ただ、うちわネタ的な展開が多いので、理解できない笑いもある。実在する編集者の個性をネタにしている箇所もある。うちわでは盛り上がるかもしれないが…。

作中では超常現象を発生させる石が登場してくる。その石をだすと小さな子供がでてくる。隠すと子供は消える。もともとはその現象を山の中で経験した編集者が相談したとことから始まる。科学的な理由づけがされ、すべては気のせいだということで終わるはずが、実際に石を目の前にだし、そこで子供を登場させてしまう。となると、妖怪が目の前にいることになる。

不思議なものは何もない。妖怪は現実には存在しないていで進められるかと思いきや…。科学的な調査を行うため、研究機関に持ち込むことにまでなっている。

後半では新幹線が妖怪のせいで立ち往生することになる。朧車が登場し、乗客が朧車を動画で撮影しネットにアップする。現実の世界に誰もが見える形で妖怪の存在を肯定するような映像が登場したらどうなるのか?水木しげるや荒俣宏がコメントを求められることになる。

さらには子供を登場させる石をテレビ番組にという話にもなる。まぁ、現実世界に妖怪があらわれるとパニックになるのだろう。特に人間に危害は加えなくとも、人間たちは恐怖することは間違いない。

次巻である「急」でどのような展開になるのか楽しみだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp