東天の獅子 第3巻  


 2017.3.16      柔道が日本全国へ広まる理由 【東天の獅子 第3巻】

                     
評価:3
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■ヒトコト感想
古流と講道館の対決が始まる。「警視庁武術試合」が描かれた本作。前巻までで、古流の強さがこれでもかと描かれていた。そこに講道館の強者たちと対決する。強さの序列が曖昧なままだが、夢枕獏がキャラクターを紹介する際の熱量により、およそ対決の結果が想像できてしまう。ただそうであっても対決の激しさは強烈なものがある。

骨が折れるのは当然のこととして、靭帯が延びるだとか腕が外れることすら当たり前。最後には負けるくらいなら死を、という覚悟で試合を行っている。それら激しい対決により講道館の強さが示された形となる。のちに講道館流の柔道が日本全国に広まる理由にもなるのだろう。次巻では、本作で最強に近い存在の、武田惣角の沖縄での対決が描かれることだろう。

■ストーリー
誰がこの国でもっとも強いのか?ついに始まった「警視庁武術試合」は、新興勢力の講道館と、古流柔術各派との争いになった。肉体と精神のどんづまりで、漢たちの汗が、血が、涙が散る!講道館の名は世に轟いた。だが、講道館の門下生が、謎の男「梟」に次々と襲われる。鍵は秘伝の武術「御式内」にあると聞き、保科(西郷)四郎は孤高の武術家、武田惣角のもとへ向かった。

■感想
武田惣角は別格として、古流柔術の強者たちと講道館の強者たち、どちらが強いかが本作ではっきりする。4対4の対決形式で行われる警視庁武術試合。前巻までで古流の強さが描かれており、それら古流の強者たちに対して投げを主体とする講道館がどのように戦うのか。

やはりシリーズ内でエピソードが多く語られていたキャラクターは順当に勝ち、負ける者はそれなりの扱いしかうけていない。ただ、戦いの激しさは強烈だ。腕が折れるのは当然として、最終的には首の骨が折れ、死ぬ直前にまでいった対決もある。

作中では、保科四朗の強さが特別に描かれている。御式内という秘伝の武術を使い古流柔術を圧倒する。御式内の正体とは、膝立ちになり狭い部屋で相手をしめ落とすような技らしい。今で言うところの三角締めなど、当時としてはあり得ない技の数々を使いこなし他者を圧倒する。

その後、御式内の使い手を闇討ちするような正体不明の強者が登場してくる。それは沖縄の唐手の使い手であり、最終的には武田惣角との因縁が語られるのだろう。柔術、柔道、空手とそれぞれが戦ったらどうなるか、という夢の疑問が本シリーズで解決されるのだろう。

次巻では武田惣角が沖縄でどのような戦いを繰り広げてきたかが描かれるのだろう。1巻では嘉納治五郎が主人公で講道館が強さを示す物語かと思っていた。結局のところ、すべてにおいて圧倒的な強さと無敗で強者たちを退けてきたのは武田惣角ただひとりだ。

1巻では早々と嘉納治五郎に勝つ。恐らく4巻では沖縄の唐手使いと対決するのだろう。そこで武田惣角は唐手を身につけ、さらに強さに磨きをかけることだろう。ある意味絶対的な強さをもつキャラは必要なので、その役割を武田惣角が担っているのだろう。

最終巻である4巻でどのようなエピソードが語られるのか楽しみだ。



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