東天の獅子 第1巻  


 2017.1.24      柔道の原点がここに 【東天の獅子 第1巻】

                     
評価:4
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■ヒトコト感想
柔道の達人たちが描かれた本作。講道館を創設した嘉納治五郎が描かれている。柔術を元にして嘉納治五郎が作り出したのが柔道らしい。冒頭では、木村政彦の強烈な強さが描かれており15年間無敗となったその強さとパワー、そして柔道に対する熱意が描かれている。そこから柔道がどのようにして始まったかを嘉納治五郎を主人公として描かれている。

四天王と呼ばれる柔道の強者たちの存在や、治五郎が今の東大に入学し、そこで文武両道を目指していたらしい。それまでの柔術が理論だったものがない状態だったのに比べ、治五郎が起こした柔道は常に理論があり、そこから相手をどのようにして倒すかが語られている。今のように柔道が世界的に有名になったのは、この理論がすぐれていたからだろう。

■ストーリー
柔術から柔道へ―文武二道の達人、嘉納治五郎の、技に対するたゆまざる追究と人間教育への情熱によって、明治になって衰退していた柔術界に新時代の息吹「講道館流」が誕生した。当初はただの新興一流派だったものが、「講道館四天王」らが頭角を現し、隆盛への道をその手に引き寄せていく。若き気概に充ち満ちた青春武道ロマン、第一巻。

■感想
伝説のプロレスラーであり柔道家である木村政彦がブラジルでエリオグレイシーと対決するまでが序盤に描かれている。そこで柔術と柔道の関係が描かれ、エリオに柔術を教えた前田の存在も明らかとなる。そこから前田が講道館出身とわかり、講道館の成り立ちが描かれる。

本作の主人公である嘉納治五郎と、四天王と呼ばれた男たちが詳細に描かれている。夢枕獏の他の格闘小説と同様に、強者同士の対決がすこぶる魅力的に描かれている。嘉納治五郎があっさりと負けを認めた相手とは。四天王の強さの序列は。興味が尽きることはない。

嘉納治五郎が今の東大を卒業していたということに驚いた。まさに文武両道。教授として生徒たちに勉学を教えながら、その給料を講道館を維持するために使う。人を倒すことを論理的に展開し、どのような理屈で人が倒れるのかということを理詰めで解き明かす。

そして、その理論を利用して柔道を作り上げる。講道館四天王と呼ばれた男たちに対して、治五郎がどのような教え方をし、強さの序列が作り上げられるのか。柔道の元を作り上げた男のすさまじさが余すことなく語られている。

中盤では合気柔術の武田惣角との対決が描かれている。講道館の嘉納治五郎と合気道の武田惣角の対決。夢のような対決が作者の想像を含めて描かれている。講道館での激しい稽古。そして四天王たちの桁違いの強さ。

さらには後世に名を残すような様々な格闘技の偉人たちが登場してくる。現在のように柔道が世界的に人気になったのは、ひとえに講道館で嘉納治五郎が作り上げた理論がすばらしいからに他ならないだろう。文武両道という部分がまたすばらしい。

嘉納治五郎と武田惣角の対決はすさまじいインパクトがある。



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