遠野物語remix 京極夏彦


 2015.1.6      あらゆる怪異作品の元ネタ? 【遠野物語remix】

                     

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■ヒトコト感想

遠野物語自体は読んだことがない。柳田國男が書いた説話集というくらしか知らない。遠野地方に伝わる伝説を京極夏彦が描くとどうなるのか。百年近く前の作品のリメイクということで、なんらかの元ネタになっている作品もあるのだろう。ただ、読んだ感想としては、古さゆえの怖さはあるが、特別な印象はない。

妖怪や伝説の類は各種出尽くした感があるので、過去の作品を読んだととしても、どこかで聞いたことのある話だ、と思ってしまう。本来なら遠野物語がオリジナルなのかもしれないが、アレンジ版を読みすぎたため、オリジナルの新鮮さがなくなってしまった。話の内容よりも、描き方がやけに突き放した感じなので、そこが後を引く怖さとなっている。

■ストーリー

人の住まぬ荒地には、夜どこからともなく現れた女のけたたましい笑い声が響き渡るという。川岸の砂地では、河童の足跡を見ることは決して珍しいことではない。遠野の河童の面は真っ赤である。ある家では、天井に見知らぬ男がぴたりと張り付いていたそうだ。

家人に触れんばかりに近づいてきたという。遠野の郷に、いにしえより伝えられし怪異の数々。民俗学の父・柳田國男が著した『遠野物語』を京極夏彦が深く読み解き、新たに結ぶ―いまだかつてない新釈“遠野物語”。

■感想
山に住む山男。まじめに検証すると、なんだろう?でかい体と赤い顔からすると異国人だったのだろうか。天狗を含め、すべては地元の人から聞いた話をそのまま物語にしている。となると、その地元民が嘘をついたのか、何かを見間違えたのか、話がしだいに変わっていき今の形になったのか。

日本昔話的な雰囲気もあり、妖怪の伝説的な恐ろしさある。やはりどうしても、はるか昔の出来事という雰囲気があるので、昔話的に思えてしまう。昔ならば、もしかしたらそんな妖怪がいたのかも?なんてことを少し思ってしまう。

昔の作品は、残酷な描写を躊躇することなく描き、後には余韻を残すことなくばっさりと話を終わらせている。非常にシンプルで、必要なことしか描かれていない。説話集なので、誰かが話した言葉なのだろうが、物語を補完するような余計な情報がない。

後日談やエピローグ的なものもないので、その後どうなったか気になって仕方がない作品もある。これが遠野物語の良さなのかもしれない。怪異にはその周辺に古くからある風習や習慣が関係していると思わせておきながら、なんらその答えを示さない。蛇の生殺しのような感覚に陥ることがある。

遠野物語を京極夏彦がリメイクしたのは間違いなく大正解だ。妖怪の話を、頭から否定するのではなく、また、人の習慣や考え方に基づく分析を行うわけでもない。妖怪は妖怪として受け入れる度量がなければならない。

本作を読んで思うのは、あらゆる怪異作品の元ネタとなった伝説的作品なだけに、期待のハードルはかなり高くなってしまった。ただ、ふたを開けてみると、それなりの怪異作品でしかない。もっと斬新な怪異を求めてしまうのは酷だとわかってはいるが、期待してしまうのはしょうがない。

遠野物語自体は未読だが、本作を読むことで雰囲気を十分感じることができた。



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