チチを撮りに


 2016.9.10      天真爛漫な姉妹が父親に会いにいく 【チチを撮りに】

                     


■ヒトコト感想
母親と姉、妹の三人暮らしの家庭に、離婚した父親が危篤の連絡が入る。娘たちは母親から父親の写真を撮ってきてほしいと頼まれるのだが…。まず、この姉妹が天真爛漫というか、複雑な家庭を感じさせないさわやかさがある。フリーターの姉・葉月はどこかお気楽で、父親のことをそれなりに覚えてはいるが、悲しみの気持ちはないようだ。

妹の呼春は父親の印象はまったくないだけに、なんの感情もないが、気持ちは沈んでいるといった感じだ。お見舞いにいく途中で父親の死を知り、そのまま葬式に参加する。父親の身内とどのような態度で接するのかなど、複雑なはずだが、そんなことを感じさせない明るい雰囲気がある。母親もまた強く生きていることが、前向きな気分になる

■ストーリー

フリーターの姉・葉月と女子高生の妹・呼春は母の佐和と3人暮らし。ある日、ふたりは佐和から「離婚したお父さんがもうすぐ死ぬから会いに行って、ついでにその顔を写真に撮ってきて欲しい」と告げられ…。

■感想
別れた父親が死にそうなので会いに行く。葉月は小学校1年の時に父親と別れたらしいのだが、そのくらいの年齢であればある程度父親の印象は強く残っているはずだ。呼春はほとんど印象にないとのことだが、それは納得できる。

母親がひとりで娘たちを育て上げ、フリーターの葉月と女子高生の呼春は父親の写真を撮りにいく。父親の家では、腹違いの弟がおり、その存在に驚くふたり。非常に複雑な関係であり、父親の再婚相手が家にいないことも、複雑さに拍車をかけている。

葉月と呼春が父親の葬式に来たのは、遺産を相続するためと相手の親戚から思われる。怒る葉月が「母親は金融関係のエリートですから!」と啖呵をきる場面が最高だ。実際には宝くじ売り場の販売員にすぎないのだが、その強がりが良い。

父親のことをほとんど知らないとしても、自分の父親の葬式というのは、やはり感じるものがあるのだろう。そのあたり、あっけらかんとした表情をしているが、葉月はどこか心に思うところがあるように見えてくる。呼春は父親を全く覚えていないにも関わらず、終始悲しい表情をしている。

腹違いの弟の境遇もまたふたりを悩ましているのだろう。父親が死に、母親は出て行ったまま。親戚の家に行くことになった腹違いの弟。このパターンはまさに「海街diary」だ。本作ではさすがに弟を引き取るとはならなかったが…。

母親が過去を回想し、父親から別れを告げられるシーンは強烈だ。傍らでは無邪気に遊ぶ姉妹の姿がある。男と女の間には説明できない部分があるにせよ、それぞれが苦悩していたというのはよくわかる。何も知らない純粋な姉妹が公園で無邪気に遊ぶ姿は、涙がでそうになる。

見る人の心理状態によっては泣けるだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp