知性とは何か 佐藤優


 2016.11.26      反知性主義とは何か? 【知性とは何か】

                     

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■ヒトコト感想
作者が何かと言葉にする「反知性主義」についてメインに語られている本作。安倍総理が「反知性主義者」だということを他作品で説明していただけに、このあたりは激しく主張している。「反知性主義」についての定義も描かれており、新しい言葉ではあるが、どういうことかはなんとなくわかる。その他には、知性とは何かを考える中で、さまざまな例が語られている。

イスラム国や宗教、そして資本論など作者の作品によく出てくるキーワードについての小難しい話はある。このあたりは、他作品と特別な差別化ができているわけではない。本作で印象的なのは、外国語を学ぶことについて書かれた部分だ。外国語を学ぶには金と時間が必要らしい。

■ストーリー
いま、日本には「反知性主義」が蔓延している。反知性主義とは、「実証性や客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度」だ。政治エリートに反知性主義者がいると、日本の国益を損なう恐れがあると、著者は主張する。

実際、その動きは安倍政権下で顕著だ。麻生副総理の「ナチスの手口に学べ」発言や、沖縄の基地問題を巡る対応などに、それは現われているといえるだろう。本書では、この反知性主義が日本に与える影響を検証し、反知性主義者に対抗するための「知性」とは何かを考える。あわせて、本当の知性を私たちが身につけるための方法も紹介する。

■感想
「知性」とは何か、ということがおぼろげに語られている。ただ、世間に蔓延している「反知性主義」に対する批判の方に重点が置かれている。実証性や客観性を無視して自分が欲するように世界を理解する態度ということなのだが。確かにこの主義が蔓延するとやっかいだ。

客観的に正しいことを言ったとしても、反知性主義者に対しては通用しないということだ。自分が思うように論理を組み立て、それを信じ込み議論されると太刀打ちできない。安倍総理がそうだと断言しているのがすごい。

本作では知性として外国語の習得について書かれている。このあたりが非常に強く印象に残っている。ビジネスで英語を自在に操るレベルになるためには、金と時間が必要らしい。日常会話程度ではない高いレベルの話だが、非常に参考になった。

どれだけ時間をかけて英語の本を読んだとして、単語が読めるようになっても、英語の語彙力が増えるわけではない。その単語を使って英作文が書けるレベルでなければ意味がないらしい。言っていることはもっともだ。

いつもの佐藤優の作品と同様に、イスラム国や宗教についての高度な話が続いてくる。資本論についても語られている。かなりの分量を他作品から引用しているので、それなりに知的レベルが高くなければ理解することはできないだろう。

自分の場合は小難しい話を続けられたため、ついつい飛ばし読みをしてしまった。佐藤優の作品を読み慣れている人ならば問題ないだろう。ただ、毎回思うのは、タイトルと内容がそこまでリンクしていないのではないか?ということだ。

「反知性主義」にはならないようにしたい。



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