サード・パーソン


 2017.7.10      それぞれのエピソードに微かな繋がりがある 【サード・パーソン】

                     
【新品】 サード・パーソン [Blu-ray]
評価:3

■ヒトコト感想
クラッシュ」のポールハギスが、似たような雰囲気の作品を作り上げた。パリで執筆中の小説家と愛人の物語。ローマでの企業スパイと美しい女の物語。そして、親権争いをする元夫婦の物語。それぞれは繋がりがない。が、ちょっとした交錯はある。クラッシュほど物語の繋がりに運命性を感じることはない。ぞれぞれが独立した物語としての面白さはある。

ただ、ぶつ切りとなった物語が描かれているだけなので、特別な印象はない。企業スパイと美女の物語が一番ミステリアスで、どんな真実が隠されているのかわからない面白さがある。3つの物語に共通点があるようでない。ラストの繋がりも、なんだかとってつけたように感じられてしまった。

■ストーリー
フランス、パリのホテルで執筆中のピューリッツァー賞作家マイケル(リーアム・ニーソン)。愛人のアンナ(オリヴィア・ワイルド)にはほかに恋人がいた。イタリア、ローマ。アメリカ人の会社員スコット(エイドリアン・ブロディ)は娘をさらわれたという美しい女(モラン・アティアス)に出会う。アメリカ、ニューヨーク。

元女優のジュリア(ミラ・クニス)は以前夫だったリック(ジェームズ・フランコ)と息子の親権を争い、裁判費用のためにメイドとして働くことにする。一見、何の接点もない3つの物語がクライマックスに向け衝撃的な形で交差していき、全てが一つに繋がる時、思いも寄らない真実が浮かび上がる…。

■感想
小説家と愛人の物語は奥が深い。小説家は処女作でブレイクしたはいいが、その後は実力をだせていない。一発屋であり、愛人との関係や妻との関係を小説に描き、自分のプライベートを作品として描いているような人物だ。

ここに親権争いをする妻がメイドとしてホテルの部屋を掃除し、子供の親権を決める大事な打合せのメモをなくしてしまう。ここに微かな繋がりがあるのだが、物語の核となるような部分ではない。結局小説家と愛人の関係というのは、なんだかよくわからない背徳な雰囲気がある。

企業スパイと女の物語は非常にミステリアスだ。女は5000ユーロなければ娘が売春させられると嘆く。男は女を助けようとするのだが…。女と男の化かし合いだ。最初は女が金を手に入れるために男を騙しているかと思いきや、男は騙されていると知りながら女に協力しようとする。それに気づいた女は…。

どこまでが真実でどこからが嘘なのかわからない。偶然出会った女に男がそこまでする義理があるかどうかという疑問もある。3つの物語の中で一番引きの強さのあるエピソードだ。

息子の親権を争う夫婦の物語は、「クラッシュ」を思わせる展開がある。ちょっとしたミスがその後に大きな影響を及ぼす。他の物語の影響が響くのも本物語だ。打合せ場所をメモした紙を、清掃に入ったホテルの部屋に忘れてしまう。取りに戻った時にはメモはなくなっていた。

その部屋の住人が小説家でメモを持ち出したのはその愛人だ。結局のところ、大事な打合せに遅刻したとことで親権を夫に奪われた女。息子を虐待する可能性があるために息子と離れ離れにさせられた悲しさを体中で表現している。

「クラッシュ」に似てはいるが、そこまでの感動はない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp