2015.6.11 冷酷非道な殺し屋の恐怖 【天使の牙 下】
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■ヒトコト感想
見た目は美しいモデルのような姿でありながら、中身は無骨な女刑事アスカとなったはつみ。アスカが自ら囮となりクラインの君国をおびき出そうとするのだが…。アスカの脳を移植し、見た目ははつみだが中身がアスカとなった後、どのように自体は動いていくのか。
やはりクラインの強烈な力ばかりが印象に残っている。あらゆる組織に手を回し、地元の警察組織さえもクラインの思うがまま。アスカを囮にした瞬間、警視庁の精鋭部隊が待ち伏せに合い殺し屋に殺されてしまう。本作の見どころのひとつとして、恐ろしげな殺し屋・神の存在がある。神対仁王はどうなるのか。アスカは仁王に正体を明かすのか。壮絶な結末へとすすんでいく。
■ストーリー
犯罪組織「クライン」の独裁者君国の愛人はつみの身体と、女刑事明日香の精神を持つアスカは、己だけを信じて決死の囮を演じていた。組織は警察内部の通報者を使い、次々と殺戮の罠を仕掛けてくる。
アスカを守るのは、明日香の元恋人・仁王こと古芳ひとり。だが、古芳はアスカの精神が明日香であることを知らない。一方、アスカは古芳が組織の内通者である疑いを捨てきれない。不協和音が生じた二人にさらなる刺客が…!!
■感想
はつみの中身がアスカだと気づくのは誰なのか。クラインに汚染された警察組織は信用できず、アスカが身を守る手段は、自分を信じるだけ。仁王に関しては、見た目が仁王からすると仇とも言えるはつみのため、助けを求めることもできない。
この見た目がはつみで中身がアスカの存在が、物語に強烈なスパイスとなっている。アスカを捕えたとしても、違和感を感じる君国。格闘技などできるはずのないはつみが、自分の力で危機から脱出する。周りの混乱が物語を面白くしている。
君国対仁王の前に、強烈な個性を放つ神が登場してくる。神の存在により、クラインの不気味さが増大し、闘いの激しさが強調される。射撃とナイフの達人である神の本当の恐怖は、冷酷非道な行動だ。仁王が地元警察には頼らず、昔の知り合いに助けを求め、体制を整えた際の戦いは悲惨すぎる。
同僚には妊娠中の奥さんがおり、そこに忍び込んだ神たちは…。まさか、そこまで残酷なことを、という読者の想像を悪い意味で裏切っている。神の冷酷非道さが極まれば極まるほど、ラストの戦いへ向けてボルテージは高まっていく。
ラストの戦いはすさまじい。仁王たちは二人。対してクライン側は大多数でありながら、仁王たちのゲリラ作戦に翻弄されやられていく。定番的であり、君国と神は仁王とその相棒が始末するのはわかっている。先が予測できていながらも、思わず熱中してしまうのは、それまでの前ふりがあるからだろう。
神に家族を殺された男は、神への恨みだけを燃料に戦いを挑み続ける。アスカを殺された(と思っている)仁王は、仇を討つために君国を狙い続ける。この熱さが物語に強烈なインパクトを与えている。
ラストの戦いは強く印象に残っている。
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