2017.6.30 満州国をめぐる内部の争い 【天子蒙塵 第2巻】
天子蒙塵 第二巻 [ 浅田 次郎 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
満州国をめぐる内部の争いが描かれている。1巻では皇帝・溥儀の第2婦人が離婚し、経緯がメインに語られており、残された皇后や皇帝がどのような扱いになるのか。それは満州国抜きには語れないだろう。日本内部での満州国の扱いや、世界からどのように見られているかまで。
浅田次郎が想像する世界は、まさにその瞬間を見てきたように実在の登場人物たちに説得力のある言葉を語らせている。満州国が事実上日本の傀儡国家となってからも、溥儀は皇帝にこだわり続ける。そして、物語は「龍玉」まで登場してくる。このシリーズで常に重要な役割を果たす龍玉。覇権を手にすることができる龍玉を日本が手に入れることができるのか…。
■ストーリー
張作霖爆殺事件から3年、息子・張学良は無抵抗将軍となり、清朝最後の皇帝・溥儀は玉座を追われたなか、満洲の野に放たれた猛獣と化した関東軍に一人反抗を続ける男・馬占山。馬は同じ張作霖側近であった張景恵の説得を受け一度は日本に従うが──。
一方、満洲国建国を急ぐ日本と大陸の動静に目を光らせる国際連盟の狭間で、溥儀は深い孤独に沈み込んでいた。ついに日本の軍部もその存在を知るところとなった天命の具体「龍玉」は今、誰の手に──。
■感想
満州国の歴史的真実についてほとんど知らない。そのため、結末がどうなるかわからないまま興味深く読みすすめることができた。下手な歴史教科書を読むよりも、何倍も勉強になる本作。最後の皇帝・溥儀は精神を病みながらも、満州国の皇帝になろうとする。
それがたとえお飾りの皇帝であろうとも溥儀のプライドはそうなることを望んでいるのだろう。すべてを日本の軍部に握られる。アジアのアメリカになるはずの満州国が、どのような内部的な変化を経て変わっていくのか。
満州国をめぐる日本内部の争いも非常に興味深い。ひとりの天才により満州国はあらぬ方向へと動いていこうとする。それを押しとどめる勢力はどのようにして方向修正していくのか。歴史的事実にのっとり、細部は作者の想像により描かれる本作。
唯一架空な物といえば、それは「龍玉」だろう。手にすれば覇権を得ることができる謎の玉。日本の軍部もそれに気づき、手に入れようとする。張作霖の事件の裏側や張学良がどのような末路を迎えるのか。さらには満州国に目を光らす国際社会など、非常に多方面から満州国は狙われている。
登場キャラクターが多岐にわたるので、油断しているとよくわからなくなる。事前に満州国をとりまく状況が頭に入っていればなお良いだろう。自分の場合、ほとんど知らないので、読むたびにこの結末はどうなるのか?という楽しみな気分で読める。
歴史的事実は確定しているので、結末は変わることはないだろう。ただ、作者はドラマチックな展開にしてくれるはずだ。最後の皇帝・溥儀と満州国。滅ぶのは確定しているが、どのような流れで滅びていくのか。先が気になって仕方がない。
史実では描かれない、満州国をめぐる奥深くが作者の想像力ですばらしく描かれることだろう。
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