タマゴマジック 恩田陸


 2016.10.14      都市伝説の起源は? 【タマゴマジック】

                     

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■ヒトコト感想
都市伝説が登場してきた経緯が語られている。最初に奇妙な都市伝説が語られ、意味不明ながらも都市伝説ならではの恐ろしさがある。空から謎の卵が降ってくるだとか、赤い犬が宙に浮かび追いかけてくる。その後、それらの都市伝説が発生した理由が語られる。ちまたにあふれている都市伝説の発生起源には、本作のような理由があったのか。

まったく関係のない出来事から、人の不安な心から都市伝説が生まれる。その都市伝説が生まれるロジックとしての面白さはある。インタビュー形式あり、まるで作者が実体験したような語り口は思わず興味をそそられてしまう。作者の不思議な雰囲気が好きな人にはたまらない作品だろう。

■ストーリー
空から謎の卵が降り、赤い犬が宙に浮かぶ−。東北の中心・S市で起きた奇怪な出来事。宇宙人襲来か、都市伝説か? 仙台出身の著者が放つミステリー集。

■感想
東北のある都市で発生した奇妙な都市伝説。昔でいうところの口裂け女や人面犬に近いのだろう。赤い犬が残業するOLの前に現れてある問いかけをする。まずは奇妙な都市伝説が語られる。それは人に対するインタビューの形ですすんでいく。その後、数々の都市伝説が語られる。そして、種明かしとなる。

この種明かしが光明で時代を反映しているなど、説明としての説得力がある。世間のちょっとした思い込みや願望などが人づてに言葉として伝わっていく先で変わっていく。強烈なインパクトはないが、奇妙な恐ろしさがある。

空から卵が降ってくる。そして、都市が自分の意志で大きくなろうとしている。たまに現実でも何かとんでもない偶然が起きたりすると、大きな意志を感じてしまうことがある。都市が自ら大きくなるために、その流れを変えることができない。そして、結果として奇妙な都市伝説が生まれることになる。

宇宙人襲来とは到底思えないまでも、何か超常現象的な流れを想像せずにはいられない。本作ではそのまま超常現象的な何かとして終わるのではなく、こじつけもあるがそれなりに説明しているところが良い。

都市伝説の奇妙な恐怖がこれでもかと表現されている作品だ。何かが由来となり都市伝説が作り上げられるのは面白い。それに一般市民は気づくことなくちょっとしたオカルトな噂として広まるのだろう。民俗学などで研究されそうなネタかもしれない。

東北の中心地のS市としてはいるが、明らかに仙台のことなのだろう。東日本大震災が起きた場所なだけに、なおさら何かあるのでは?と勝手な深読みをしてしまう。タマゴのくだりが少しありきたりに感じたが、全体の奇妙な流れはすばらしい。

作者の作品らしい流れだ。



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